付加体を証明する諸磯海岸 ぶらり防災の旅
先にご紹介した城ヶ島だけでなく,三浦半島では,三浦市の尾上町,海外町,諸磯海岸のエリアにもたくさんのジオサイトがあります。
油壷もそうですが,美しいヨットが並ぶ入江に目を惹かれます。
場所は三浦半島のここです。
拡大するとこのあたり。
周囲に駐車場はないのでどこかに車をとめて歩く必要があります。
(海外町のスランプ褶曲の地層1)
地元教育委員会の説明を一部借用すると(以下,同様),三浦市海外町の海岸一体に露出するのは,スコリア質の砂岩とシルト岩の互層(三崎層)。
この地層の詳細は,前回の城ヶ島の項をご覧ください。
(スランプ褶曲2)
この崖のスランプ構造では、軸面をわずかに東に傾けた一つの背斜(はいしゃ:波状を表す地層の峯の部分)と、その東に続くごくゆるい向斜(こうしゃ:波状を表す地層の谷の部分)からなる見事な波状に曲がった褶曲(しゅうきょく)面が認められるということです。
説明が難しいですね。
地層全体が褶曲しているのではなく、地層の特定の部分だけがうねうねしていることで、ちょうどそのうねうねした部分の地層だけが海底地すべりなどによって褶曲したことがわかります。
三浦半島を歩いているとたくさんの野菜畑が目に留まります。
特にこのあたりはキャベツ畑が多い。
尾上町の海岸にでてみましょう。
海岸に向かってひたすら歩きます。
場所はここの諸磯青少年センターの下あたりです。
海岸にでました。
かなり特異な景観ですね。
真っ黒な岩は,火山噴出物である細かいスコリアでできた凝灰岩や砂岩です。
白い方はシルト岩。シルトといのは,泥よりも少し1つ1つの粒子は大きいものの砂よりは小さいものです。
つまり,岩石をつくる個々の粒の大きさでいうと
礫>砂>シルト>泥
礫岩>砂岩>シルト岩>泥岩
面白い景観です。
シルト岩の白が目立ちますが,かなり細かい地層を形成しています。
岩石のスケールはかなり大きいです。
もともとは白い凝灰質シルト岩の上にスコリア質の凝灰岩が乗っていたんでしょうが,侵食(人間による侵食を含む?)により部分的に残っているという感じでしょうか。
半島の,今度は小桜姫神社側に移動します。
細い道を海岸に向かって歩いていくと。
灯台がみえる海岸にでます。
釣りを楽しむ人が結構いました。
場所はこの地図の「浜諸磯」のところです。
級化構造がきれいにでていました。
級化構造といのは,地層の下のほうに粒の大きなものがあり,上に向かうについてだんだん小さくなっていく地層のことです。
水の中に粒の大きさの異なる砂泥を入れると,こういう順番で堆積していきますね。
地層の上下を判定するのに役立ちます。
ここは,写真中央やや右で地層が切られているようにみえます。
ここ浜諸磯では,このようなスランプ礫がたくさんあります。
これは,まだ固まっていないスコリア質の砂岩(黒いところ)の上に,海底地すべりなどによって泥岩(白いところ)の塊が落下してできたものと考えられるようです。
クッキークランチみたいですね(笑)
再度,キャベツ畑。
今度は,諸磯海岸のメインともいえる,デュープレックス構造の見学に向かいましょう。
ここの道を下ります。
この赤い点のところがデュープレックス構造がある場所です。
行き方はかなりわかりにくいですが,この赤矢印のようなルートで海岸にでる形です。
参考にしてください。
これがデュープレックス構造です。
デュープレックス構造は,逆断層の活動が繰り返され,屋根瓦のように地層が固まることをいうようです。
ここ三浦半島に付加体がくっつく際に,付加体が何度も陸の下に底付けされると,こうした形ができるようで,付加体構造の証拠として数多くの研究者がこの構造をみにくるようですが・・・
よくわかりませんね。
ただ,単なる海底地すべりの際に形成されたものである可能性もあるようです。
反対から撮影。
横から撮影。
やはりこれができたときのイメージを頭に浮かべるのは難しいです。
デュープレックス構造を置いておいたとしても,このあたりの地層は非常に魅力的です。
なんとなくクジラのようです。
やっぱりクジラのような。
付加体としてどんどんくっついていく姿がみえるようです。(このイメージが正しいのかどうかはよくわかりませんが)
非常に最近(50万年ほど前)陸地になった付加体なので,なんとなく新鮮にみえてきてしまうのは錯覚でしょうか。
かなりダイナミックな姿です。
次々に大陸に地層が付加されているイメージそのものの光景です。
美しいです。
地球のダイナミズムを感じます。
せりあがる付加体。
きれいな褶曲構造です。
付加される際に褶曲したのか,それ以前の海底地すべりで褶曲したのか。
諸磯海岸,紹介するときりがないほどの地学の宝庫です。
平成30年3月
静岡市清水区 弁護士 永野 海