
【被災者生活再建カード(ゲーム)】 ボードゲーム形式で被災者支援制度の活用を学び、実際の支援もできるツール

⑥上記⑤よりさらに簡単に罹災証明の種類と住まいの再建の種類ごとに貼るカードがわかるパターン集(A4カラー印刷・全15枚)のダウンロードはここをクリック【ワークショップでは主人公の罹災証明の種類(たとえば半壊)のパターンだけ配布すれば十分です】
防災の世界では、避難所運営ゲーム(HUG)、災害図上訓練(DIG)など、地図やカードを使って具体的な防災・減災対策(対応)を学ぶ優れたツールがたくさんあります。しかし、
被災後に生活再建をする上で活用できる支援制度を具体的に考えるようなツール
がないように感じられましたので、作ってみました。
現在では、内閣官房国土強靭化推進室主催のワークショップでも、この被災者生活再建カードゲームを採用していただいたほか、令和元年11月12日の参議院法務委員会では、被災者生活再建カードの現物が各委員に配布された上で、充実した被災者支援や、支援制度の学習に有用なツールとして法務大臣のご答弁もいただきました。また、内閣府「災害ケースマネジメント実施の手引き(令和5年3月)」にも、有用な研修ツールとして被災者支援カードとともに掲載(133-134p,154p)いただいています。
この被災者生活再建カードは、
災害前の支援制度の知識の備えとして活用していただくだけでなく、実際の被災された方への支援活動でも、その方に関係のあるカードを切り取り、用紙に貼り付けて、コメントなどもつけて持ち帰っていただく形で
活用しています。

こうした活用は、支援者も頭の整理をしながら、今後の生活再建の道筋の助言ができ、被災された方は、家で貼り付けてもらったカードをじっくり見直しながら助言内容を思い出したり、家族で話し合ったり、今後の生活再建の流れを大まかにイメージすることにもつながります。


参加者は4~6人でテーブルを囲みチームになります。テーブルの上に、このサイトからダウンロードできる、①台紙(A3)、②被災者生活再建カード(A4)、③ライフスタイル・住まいカード(A4)、④カードを置く説明書(A4)を並べます。カードを切って貼るために、ハサミやのりも用意します。金額を台紙に記入するための筆記具も必要です。

↑ カードを貼る台紙
実際に被災地相談で使う場合には、被災された方の情報を聞き取り、以下の流れで台紙に記入したり、カードを貼っていきます。ワークショップの場合には、以下のような問題事例が発表されます。

↑ カードを貼ったり、記入したりする流れ

↑ ワークショップの設例のイメージ(地図や写真も使って主人公の住まいの場所や自宅の様子をより具体的に表現できればさらにリアルになります)
ワークショップをするためには、支援制度の基本的な知識は必要となるため、はじめに、ワークショップ進行者が、それぞれの支援制度の内容や、被災後の生活再建の流れなどについて、概要を解説します。被災地の実情や支援制度を熟知した進行者の存在が重要になります。
その上で、ワークショップ開催地の実情にあった事例を提示します。
ワークショップ参加者は、手元の生活再建カード(支援制度)を上手に活用しながら、事例の主人公の生活再建を実現していくことになります。
その上では、先ほどのゲームの説明書にあるように、生活再建カードを先に選ぶのではなく、ライフスタイルカードをみながら、テーブルの仲間とともに、主人公にとって、どのような生活再建が望ましいのかについて、主人公やその家族の思いに寄り添った検討をします。
ライフスタイルカードを2つ選択できたら、この大切にしたい2つのカードを実現するためには、最終的にどのような住まいの再建(修理?建替え?引っ越し?)を選択するべきなのかを考え、住まいカードを1枚選びます。

どんな価値を大切にするかによって、今のままの土地で暮らすのか、この際引っ越すのか、家を建てるのか、修理で済ますのか、中古住宅でも購入するのか、災害公営住宅や賃貸アパートで暮らすのか。はたまた老人ホームの入居まで考えるかなど、様々な生活再建の形がみえてきます。

主人公にとって望ましい生活再建の形が決まったら、その上で使えるカードを余すところなく選択し、台紙の上においていきます。
その際、2枚選んだライフスタイルカードは切って、台紙の右上に置き、最終的な住まいのカードも1枚選んで切って、台紙の左下に置きます。
上図のように、そのカードによって得られる金額まで検討できれば、よりリアルな生活再建の疑似体験となります。
とはいえ、なかなか罹災証明書ごとに使える支援制度(カード)は異なりますので、カードを選んで貼るのが難しい、と思われるのが通常だと思います。そこで、罹災証明の判定と、住宅再建の選択のパターンごとに最大限貼れるカードを並べたパターン集(ひな型)を作りました。これをみながら議論すれば簡単にカードを選んで、貼っていけると思います。ご活用ください。
※ パターン集のダウンロードはこちらから
※ 参考までに一部を以下に貼り付けます

↑ カードの貼り付けパターン集の一例
各チームがカードを貼り終わったら、ほかのチームのテーブルの見学会をやると、いろいろな考え方をしたチームがあることがわかり学ぶが深まります。
最後は各チームが、それぞれの住まいの選択の理由などを発表し、進行役がコメントをして終了です。
ゲームとはいえ、実際の被災後の再建と支援制度の活用を疑似体験した経験は大切な財産になります。
被災者生活再建カードに関するお問い合わせは弁護士永野海(mail@naganokai.com)まで
アウトドア防災家のあんどうりすさんには、カードのフォントや色彩のユニバーサルデザイン化について具体的なアドバイスをいただきました。また、静岡市社会福祉協議会の川津貴臣さんには、会場での活発な議論につながる白紙カードなど貴重なアイデアをいただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。