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津波避難すごろく

※学校や子ども行事での実施にご関心があればご連絡ください
(推奨年齢:小学校4年生以上)

津波避難すごろくについて

私が東北の被災地で心に決めたことは、絶対に子どもたちの犠牲を無駄にはしないということです。

それは、東日本大震災から正しく学び、次の自然災害から命を守ることです。

東北の子どもたちから未災地の子どもたちへと命のバトンをつなぐことは、東日本大震災を経験した私たちみんなの宿題だと思っています。

そのためには、まず何よりも東日本大震災で何が起こったのかを正しく知る必要があります。

これまでそうした内容の津波防災講演会を各地で開いてきましたが、講演会形式ではなかなか子供たちの参加に結びつきません。また、仮に子供たちが講演を聞いてくれたとしても、そのときはなんとなく「へえ」と思っても、本当に津波避難の力を身に付けてもらえるかに疑問を持つようになりました。

そんな中で作ったのがこの津波避難すごろくです。

災害から命を守るために共通して必要なことは、①「自分の頭で考えて」②「実際に行動すること」です。

津波避難でいえば、①自分がどこに逃げるべきかを頭をフル回転させて考えた上で、②「たぶん大丈夫」と思わずに、「念のため」と考えて実際の避難をすることが、何よりも大切です。

東北で津波から命を守った人でも、地震のあと、自分からすぐに避難を開始した人は案外少なく、周りの人が逃げているのをみてようやく避難のスイッチが入った人も多かったのです。

①自分の頭で避難を考えて、②実際に人形を動かして津波避難を体験すること、その疑似体験のツールであるこの津波避難すごろくが、本当に命を守れる津波避難の最初のきっかけになればと思います。

津波避難すごろくの流れ

1 ルール説明を聞き、チームごとに話し合って、すごろくの町の中で、最大30分を使って人形を動かし自由に津波から避難します
  ↓
2 チームごとに、どうしてその場所に逃げたのか、どうしてその道のりで逃げたのかを発表します。避難の途中でアイテムをとったり、他の人と一緒に逃げた場合には、その理由も発表します
  ↓
3 代表者がサイコロを振り、①やってくる津波の高さや、②津波がやってくるまでの時間を決めます。自分たちの選択で果たしてきちんと津波から命を守れたかどうか
  ↓
4 津波から生き残れたかどうかに関わらず、それぞれの選択にひそむ危険性や有効性について、東日本大震災で起こった出来事をもとに解説を聞き、みんなで振り返ります
  ↓
5 家に帰ってからの宿題を持ち帰ります

写真は、自分たちがベストだと考えた、避難の道のりや、避難場所についてみんなに発表してもらっているシーンです。

大人よりもむしろ子どもの方が、するどい意見がどんどんでてきます。

写真は、東日本大震災の津波ではどんなことが起きたのか写真や動画をみながらみんなに考えてもらっている場面のスライドです。

「すごろく」と題していますが、実は、仮想の町に逃げる際には、サイコロは振らないし、進む決められたマスもありません。町の中の移動は自由、どこに逃げるかは無限の選択肢があります。

では、サイコロはいつ使うのか。

1つは、逃げたあとに、本当に生き残れるかを確かめる際、襲ってくる津波の高さがサイコロで決まります。遊びのように思われるかもしれませんが、どれぐらいの高さの津波がくるのかは、実は、起きてみないと誰にもわかりません。それはサイコロの目で津波の高さが決まることと非常に似ています。だからこそ、避難にベストを尽くさないといけないのです。

もう1つは、少しネタバレになってしまいますが(参加者には伝えないで下さいね)、津波の到達時間を決めるのにも使います。

実は、実際にゲームを体験してもらうと、最大30分の時間をめいっぱい使って避難するチームが多いのですが、実際の津波は30分待ってくれるとは限りません。

本当に津波の怖さを経験した人は、最大30分避難の時間がありますとルールを聞いても、30分全部は使わないでしょう。何もアイテムなどとらず、真っ先に一番近い高い場所に駆け上がる選択をすることが多いと思います。


1分1秒でも早く避難を完了させる大切さを知ってもらうために、あえて津波到達時間を決めるサイコロを振ってもらいます。ここで振るサイコロは5つです。6×5で、運が良ければルールの最大時間どおり30分後に津波がやってきます。

でも転がした5つのサイコロの目が全て1になってしまったら? 5分で津波がやってきてしまうことになります。その際には、自分たちの避難のルートの5マス目の場所まで人形を戻してもらうことになります。

会場からは、「ずるい!」「うそーー!」という声が聞こえてきますが、ルール上は、「最大30分使えます」「30分全部を使ってもよいし全部を使わなくてもよいです」と説明はしているんですね。30分ほぼ使い切ってしまうのは、津波の怖さを実感できていない証拠でもあります。その状態で大津波に遭遇してしまったら命は守れません。

30分めいっぱい使って逃げたチームは、たとえば20分後の位置に人形を戻してもらった場合、たいていは標高1メートルしかない低地にいることになります。

高さ1メートルの場所だと、津波の高さを決める2つのサイコロを振るまでもなく、みんな命を落としてしまうわけです。でも残念ながらこれが現実です。いまの津波避難力ということです。

このゲームを通じて、津波避難の本質を理解してもらえればと思っています。

次に避難の際にとる「アイテム」の話です。避難の際に、すごろくの町に用意されているたくさんのアイテムをとるチームがでます。というかほとんどすべてのチームがなんらかのアイテムをとります。

たとえば防災ラジオ。防災の話などでは「ラジオが大事だよ」なんてよく聞きますから、思わずとってしまうんですね。でも、もう地震がきてしまっていて、次はすぐに逃げないといけないというときに、わざわざ時間をかけてラジオを取りに行くことは必要でしょうか?

津波避難のルールは、ある意味ではとても単純です。地震で揺れたら、少しでも早く、少しでも高い場所に、です。ラジオからわざわざ教えてもらうことはありません。

ましてや東日本大震災では、気象庁の当初の低い津波予想の発表を信じて、避難しなかった多くの方が津波の犠牲になってしまいました。津波について正しい情報が入ってくるのは、避難を終えたあとずっと時間が経ってからなのです。

津波避難の際に本当に命を守ってくれるアイテムってなんなのか、改めて考えるきっかけにしてもらえればと思います。

さて、このすごろくの対象年齢は小学校4年生ぐらいからですが、小さな子供たちでも、僕も驚くようなすばらしい発表を毎回してくれます。

たとえば、

「この山は確かに高いから避難するのにいいけど、海や川に近いから選択しませんでした」

「一度すぐ近くのこの建物まで逃げて、様子をみてから、大丈夫そうなら近くのもっと高い山に逃げることにしました」

「津波のあとしばらく水がひかないかもしれないので、大人と一緒に避難して水と食料のアイテムも持っていきました」

これらは全て実際に小学生の子どもたちが発表してくれた内容です。すごいですよね。

この津波避難すごろくには、「正解」自体はありません。

「津波避難はこうすればよい」と答えのように覚えてしまうと、自分の頭で考えることをしなくなります。自然や津波の姿は毎回全く異なります。水というアイテムをとったことで津波のあと命を守れるかもしれないし、逆に、水をとりにいったことで津波から逃げる時間を失ってしまうこともあります。

地震がおきたその場面場面ごとに、答えは異なるのです。自分なりに一生懸命に考えて、すごろくの図版の上で逃げてみる、という体験をすること自体がとても大切です。

各地の小中学校、子どもたちの防災行事などお声がけをいただければ喜んでご協力しますので、ご関心があればご一報下さい。(mail@naganokai.com)

静岡新聞2019年7月28日朝刊
2020年3月10日テレビ静岡特集
2020年3月11日テレビ静岡震災特番(間寛平さんにすごろくを体験してもらいました)

津波避難すごろくで使うスライドの一部 
*実際のワークショップでは動画なども使います

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