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砥部の衝上断層(愛媛県砥部町)

愛媛県砥部町にある砥部衝上断層公園。

ここでは日本列島の内側と外側の切れ目(つなぎ目)であり、日本最長の断層でもある「中央構造線」が動いた痕跡をみることができます。

地質調査総合センターのHPから引用

中央構造線はこのように四国北部を縦断しています。

砥部町はこの中央構造線断層帯の南側に位置します。

これは砥部町の東側にある湯谷口の衝上断層の現地看板です。

中央構造線の南側にはピンクの三波川変成帯の結晶片岩が分布し、北側には7000万年前の白亜紀に海で堆積した和泉層群の地層が分布しています。

この和泉層群は、この愛媛から大阪と和歌山の県境の和泉山脈まで300kmにもわたり続いています。

徳島県立博物館HPから引用

この断面図が非常にわかりやすいです。いずれも海のプレートが潜り込む先に剥ぎ取られた付加体の地層ですね。

さて、今回ご紹介する衝上(しょうじょう・つきあげ)断層とは、逆断層の一部で、乗り上げる角度が45度以下の低角度の逆断層のことです。

この砥部町では、海のプレートに押されて動いた(直下型地震が起こったということです)中央構造線の断層の痕跡をみることができます。

では、みてみましょう。

愛媛県砥部町にある衝上断層公園

この砥部川が削ってくれたおかげで断層が露頭しています

橋を渡ります

見えてきました 滝の上には大きな甌穴(ポットホール)も見えます

この滝の奥の地層に注目

これは断層に乗り上げられた側(南側)の礫岩層。コンクリートのようにカチカチです

この礫岩層は久万層軍明神層とよばれ、和泉層群の地層の上に、1600万年前ころ(つまり日本列島が現在の位置にきたころ)に堆積した地層です

写真奥が下流(北側) 手前が礫岩層

写真奥が下流 手前の礫岩層の奥に異質な地層が接触しています(断層)

写真右の滝のところの地層が先ほどの礫岩層。

写真左側の灰色の地層は和泉層群海のプレートに押されて中央構造線が動いた(直下型地震が起こった)ことによって、礫岩層の上に、本来下にあった和泉層群の地層が低角度で乗り上げてきたのです。

よくみると2つの地層の間に茶褐色の地層がみえます。


これは中央構造線の断層のすき間に地下から上がってきたマグマが冷えて固まったもの。岩脈といいます。安山岩のようです。

ただし最近は岩脈ではなく、地下にあった三波川変成岩(結晶片岩)が断層が動いたことによりのりあげて、しかも熱水変成したものという見解もあります。

こちらは左岸。手前が礫岩層、その上に断層運動で破砕された岩石(破砕岩、カタクレーサイト)のような層がみえ、その奥に安山岩の岩脈。

アップで。

少しひいた写真で。

こちらは再度右岸(左が下流)。

よっこいしょっと右の地層に左の地層が乗り上げたようす(衝上断層)がよくわかります。

断層運動の摩擦で破砕されたような痕跡。

アップで。

断層部はきれいな一直線です。

写真手前は、和泉層群の砂岩。

今度は対岸(右岸)側から。

安山岩の岩脈(右) 乗り上げられた礫岩層(左)。

写真右は和泉層群の地層が破砕されたのち際固結している地層 

左は安山岩の岩脈。

右岸から 写真手前は礫岩層。

滝から150mほど上流にいくと三波川変成帯の岩石(結晶片岩)に変わります。


写真はちょうど礫岩層(右)と結晶片岩(左)の境界付近。

ここから上流は美しい結晶片岩の地層です。


結晶片岩は、海のプレートが陸のプレートに潜り込んだ海溝の奥でのとんでもない高圧と熱とで岩石が変身したものです。

上流を覆う結晶片岩。

砥部町の中央構造線の断層運動の痕跡である衝上断層。

愛媛県にお越しの際は、松山市中心部からも数十分でこれる場所ですので、ぜひ一度訪れ、中央構造線が、現在も海のプレート(フィリピン海プレート)に押されて直下型地震を起こす断層であることが今一度感じてください。

令和2年1月訪問

弁護士 永野 海

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