憲法記念日に少し長い投稿を
日頃、憲法のことなんて全然考えませんが、コロナを機に「憲法に緊急事態条項を」というニュースがYahoo!のトップニュースに流れ、世論調査でも賛成が多いのをみて、びっくりして投稿しときます。
ちなみに、↑日頃憲法のことをこれっぽっちも考えていないというのは、(恥ずかしながら)、正真正銘本当のことなので、憲法を変えたいとか、変えたくないということについて、特段大仰な意見はもっていませんので、念の為。
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憲法ってなんのためにあると思いますか?
大学で憲法の授業すらとったことがない僕は、素人的に憲法を横から眺めていて、2つの大きな意味があると勝手に思っています。
1つは、「人権」というある種のフィクションを設定して、それをみんなが守ることで、一人ひとりが幸せに最後まで生き抜けるようにしようとする壮大な社会装置、社会技術としての意味。憲法は装置です。
一人ひとりは弱いし、明日危なくなるのは我が身かもしれないということを考えた、人間の偉大な知恵だなあ、と思います。はい、勝手に。
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もう1つの憲法の大きな目的は、写真にもある、「権力者を縛ること」です。
僕は、憲法は、市民と権力者との契約だと思っています。
この約束事を守るならリーダーになってもいいよ、守らないならリーダーはやめてもらうよ、守らないならリーダーでも裁くよ、と。
市民は「自分たちを守る」ために、仕方なく「権力の存在」を認めているわけですが、権力は明日自分の自由や命を奪うかもしれない、とても怖いものであることを知っているので、国のリーダーとの間で指切りげんまんをしているわけです。
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毎日、権力者が目の前で市民を虐殺していたり、毎日フランス革命が起こってたりすれば、こんなこと改まって考える必要もないのですが、
一見平和な時代が続くと、ちゃんと、「ここはテストにでるよ!」、というぐらいに思い出しておかないと危ないなあ、と思います。
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今回のニュースとの関係で何が言いたいかというと、
憲法というのは、
「市民が(ある意味目に見えない妖怪のような)国家というものや、権力者などを好き勝手させないために、市民が作成し、守るように要求している契約書」
なので、
権力者の側から、憲法を変えたい、と言い出すのはそもそもおかしなことだ
ということをもっと理解してもらいたい、ということです。
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百歩譲って、契約書の作成権限のない権力者の側から、「あのさ、憲法なんだけどさ、こう変えたいんだよね」と提案することを許してあげるとします。
でも、それは、必ずといっていいほど、権力者がもっと好き勝手にしたい、という動機からなので、市民の側としては、よっぽど警戒して、「基本つっぱねる」、ぐらいの態度でないとおかしいのです。
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夫婦のやりとりなどと置き換えて考えると、わかりやすいかもしれません。
妻が、とても立派な家庭内憲法(硬性憲法)を打ち立てて、夫がそれを嫌々守らされているときに、夫から、
「憲法変えたいんだけどさ」
と提案があったときに果たして妻はどうするか、と。
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「憲法に緊急事態条項を入れる」
内容はともかく、これは基本的なこととして、権力者からの、
「もっと自由に皆さんの自由とか権利とか奪いたいんだけど」
という提案なわけです。
憲法が市民が作った契約を権力者に守らせる装置だとすると(法の支配)。
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で、それに対して、電話で世論調査でYES,NOで簡単に質問されて、「賛成」って答えちゃうんですか? 市民の皆さん。
弁護士的には、
「大丈夫ですか?」
「ちゃんと意味わかってますか?」
「弁護士の解説聞いてからにしなくて大丈夫ですか?」
「クーリングオフできないですよ。」
と言いたくなります。
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ということで、まずは、
「憲法に緊急事態条項を入れたい」
という内容は、それをどの権力者が提案したとしても、おれおれ詐欺の電話ぐらい、最初に警戒してほしいですよ、というのが1つ。
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もう1つは、せめてメディアも含めて、
「憲法に緊急事態条項を」
みたいな言葉だけ並べるのはやめて、
いまの権力者は、
「◯◯をしたいから、憲法に緊急事態条項を入れたい、といっている」
というところをしっかり明らかにさせましょうよ、ということ。
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せめてそこを最初にはっきりさせてから、賛成とか反対の議論にいかないと、
・◯◯がいまの法律で本当にできないことなのか、とか、
・憲法を変えれば本当に◯◯ができることになるのか、とか、
・それをすることでこんな危険もあんな危険も市民の側にはあるのに、わざわざ◯◯をするためだけに本当に憲法を変えることを市民は望んでいるのか、
みたいな議論もできませんからね。
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写真の素晴らしい憲法解説絵本は、奈良弁護士会さんの発明です。ここからダウンロードできます。
https://www.nichibenren.or.jp/…/constitution_issue/what.html
めっちゃ長いですが、当の奈良弁護士会さん自身によるこの絵本の解説ページもそれはもう素晴らしい出来です。
http://www.naben.or.jp/sdm_annai_kaisetsu.html
この絵本の存在、恥ずかしながら、「今日」知りました。
去年、奈良弁護士会さんに研修講師で呼んでいただいたときの写真を最後に貼り付けます。
令和2年5月3日の憲法記念日に
弁護士 永野 海