チャートと断層運動の光岩(愛知県田原市)
これは渥美半島のチャート。
チャートは、太平洋のはるか沖合いで、放散虫(プランクトン)の殻が粉雪のようにゆっくり降り積もり、1000年に1mmというペースで堆積してできた岩石です。
珪酸でできているので硬くカッターナイフでもあまり傷がつきません。
このチャートはジュラ紀の時代に堆積したものです。
田原市赤羽根町にある西山。
標高120mの低山ですが、この中腹で、面白いものが見られます。
ここが入り口。
平成26年に愛知県の天然記念物に指定され、観察路が整備されました。
登っていきましょう。
片道20分程度の山道です。
足元の石ころも、ほとんどがチャート。
一部倒木がありますが、基本的にとても整備された歩きやすい道中です。
見えてきました、これは何でしょう。
高さ9m、幅22mにわたるチャートが露頭しています。
このチャートという岩石は、遥か沖合の深海で堆積して生まれたあと、その後プレートにのって移動し、ユーラシア大陸まで運ばれたあと、海溝で沈み込めず、剥ぎ取られ、ユーラシア大陸にそのまま塊のままくっつきました。
付加体といいます。
日本は付加体の集まりでできた島です。
その後日本列島が2000万年ほど前から大陸から分離したときに、この光岩を含むチャートの地塊も一緒にユーラシア大陸から分離し、いまの渥美半島まで移動してきたというわけです。
1億年以上の壮大な時間の流れを、この岩石から感じることができますね。
この渥美半島の光岩は、表面がつるつるしているので、鏡肌とも呼ばれます。
つるつるしているのは、この硬いチャートが地震の断層運動の摩擦でこすられたからです。
表面にはたくさんの傷(条線)がついていますが、これは断層運動の際についたものです。
どの方向に断層が動いたかもわかります。
硬い硬いチャートという岩石が、こんなにもつるつるになる、地球のエネルギー、断層運動のエネルギー、すごいです。
この光岩、上まで登ることができます。
光岩のてっぺんからの景色。
美しい風景です。
渥美半島の光岩。
ただの岩にみえますが、深海で1億年以上前に舞っていたプランクトンの粉雪も、その後の壮大なるプレートの移動、それにその後の地震、断層運動、その全てを教えてくれる地球の貴い痕跡なのです。
令和元年11月
弁護士 永野 海