静岡県内を中心に多数の大型量販店や飲食店を経営しておられる企業様向けに講演をさせていただきました。

この企業様は、県内沿岸部に複数の大型店舗を構えておられるため、何よりもまず、お客様と従業員の命を守るための平時の対策の重要性についてお話をさせていただきました。

平時の備えの重要性という意味では、東日本大震災の津波被害事例のなかでも、石巻市の日和(ひより)幼稚園の痛ましい事案が多くの教訓を与えてくれます。

幼稚園が高台にあったにもかかわらず、また、災害時には園児をこの幼稚園で保護者に引き渡すとの災害マニュアルがあったにもかかわらず、幼稚園がとった行動は、園児をあえて海抜の低い低地にバスで移動させて保護者に引き渡すというものでした。

その結果、園児を載せたバスを津波が飲み込み、乗っていた園児が犠牲になりました。

こうした事例を具体的に紹介しながら、平時に各店舗で何ができるのか、何をなすべきなのかを講演前半ではご紹介させていただきました。

 

講演後半は、生き残った従業員の生活再建の備えです。

世の中は、企業のBCPが流行りのようになっていますが、たとえば供給についてのBCPをいくら準備していても、肝心の企業を支える従業員が被災者となり生活にも困るようであれば仕事どころではなくなります。

現在の日本には、実は多くの国民、市民が知らない多数の支援制度や有用な制度があります。

こうした制度の存在とその活用法を具体的に知っていただくことで、いざ大災害が発生した際の従業員の皆様の生活再建につなげていただきたい。これが後半の内容でした。

 

役員の皆様、従業員の皆様は非常に熱心に聴講していただき、この企業様の減災や企業の社会的責任に対する強い意識を感じました。

災害時にどのような対応をとれるか、とったかで地域の皆様の企業を見る目が確実に変わります。

たとえば、東日本大震災でガソリンの供給が大幅に低下した際に大幅な値上げをした会社。地域住民はその態度を忘れません。そうしたガソリンスタンドがその後廃業に至るケースは決して珍しくないのです。

他方、熊本地震で、震災後、一つ一つの顧客に電話をし、無償で屋根にブルーシートを張ってまわった某工務店。その後、地域の中で信頼される企業となり発注が増えました。

 

どんな大きな災害でも、その時は苦しくても、将来必ず地域は復興します。

目先の判断を誤ることなく、従業員あっての企業、お客様あっての企業、地域あっての企業という視点をどれだけ持てるかが問われることを忘れてはいけません。

 

今回の会社様は、講演に先立つ事前打ち合わせのあと、直ちに各店舗に対し、震災時にはお客様の命を守るために、商品であるクッションなどをお客様に配って頭を守っていただく対応をとる指示をされました。

また、この講演時には、従業員全員に対し、防災用品を配布しました。

最終的にはこうした意識をもつ企業様が必ずいち早く復興を遂げると私は思います。

 

余談ですが、私の講演前には、新入社員の入社式も行われました。

新入社員代表の挨拶、辞令の交付を受ける姿をみて若い皆さんのきらきらとした姿に胸を打たれました。

そのために防災以外の話までしてしまい、少し時間をオーバーしてしまいましたことをお詫びいたします(笑)

 

静岡市清水区 中央法律事務所

弁護士 永野 海