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仮設住宅から恒久住宅への移行の難しさ

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170415-00050127-yom-soci

今日で熊本地震の本震からちょうど1年です。

上記読売新聞の記事によると、

「地震の影響で仮設住宅に暮らす計100人にアンケートを実施した。仮設住宅の入居期限(原則2年)について、7割近くが「延長を希望する」と回答した。仮設住宅を出た後の住まいが「確保できておらず、見通しも立たない」とした人は約6割に上った。いまだに生活の礎となる住まいの見通しが立たず、復興の大きな課題になっている。」

とのこと。

阪神淡路大震災でも、東日本大震災でも、仮設住宅から恒久的な住宅(たとえば災害公営住宅)への移行にものすごい時間がかかりました。

 

かかりました、というより、私はちょうど甚大な津波被害を受け、高台への防災集団移転が進められている宮城県の山元町を訪問しましたが、

公営住宅への入居は、震災から6年以上を経た現在でもまだ”完了していません”。

 

熊本の現在の状況を整理してみましょう。

熊本地震で建設された応急仮設住宅は全部で4303棟です。これは地震から7か月目の平成28年11月に全て完成しました。

この仮設住宅には、現在も1万人強の被災者が暮らしています。

災害救助法の関係では、仮設住宅の入居期限は原則2年とされています。

仮設住宅というのは、被災者をなるべく早く劣悪な環境の体育館などの避難所生活から解放するために、建築基準法なども緩和して応急的に建設されるものなので、長期の入居を予定していないからです。

益城町の仮設住宅の様子

 

しかし、2年ででていけといわれても、次に住む場所がなければでていきようがありません。当たり前のことです。

そのため、本来であればこの2年の間に、今後ずっと住める住まいが確保されなければなりません。

しかし、阪神淡路でも東日本ではそのようには全くなりませんでした。

 

なぜそのようになってしまうのか、熊本地震を例として考えてみましょう。

上記のとおり、熊本地震では4303棟の仮設住宅が建設され、そこに被災者が住んでいます。

熊本県は被災者にアンケートを実施して、仮設住宅をでていったあとに災害公営(*住宅災害で家屋を失い、自力で住宅を確保することが困難な被災者のために、地方公共団体が国の補助を受けて供給する住宅のこと)への入居を希望する世帯数を把握し、1027戸の災害公営住宅の建設を予定することにしました。

しかし、現在までに完成した災害公営住宅は1つもありません。

1つもないどころか、熊本県によると熊本地震から1年のこの4月の時点では、建設の計画がある公営住宅の戸数すら207戸すらありません。残り800戸は建設計画にすら至っていないのです。

先日、西原村で公営住宅の入居申し込みがはじめて開始されたというニュースが明るいニュースとして報道されていましたが、その西原村ではどうなっているのかというと、実際には、今後計画されている公営住宅の整備手法すら「未定」とされています。わずかに測量が開始された程度の進捗状況です。

これでは予定されている1000戸の災害公営住宅の完成が一体いつになるか、想像すらできません。

そのため、現在仮設住宅に入居している人が、入居期限を延長してもらいたいと考えているのは極めて当然のことなのです。(ちなみに阪神淡路でも東日本でも仮設住宅は2年を超えて延長延長の手続がされています)。

 

さて、仮設住宅に入居している被災者のなかには、公営住宅への入居ではなく、自分で自宅を再建しようと考えている人もたくさんいます。

そちらは可能でしょうか。

先月熊本を訪問し、現地をみてきましたが、益城町などは、いまも全半壊した家屋が解体すらされずに放置されています。

H29.3時点で解体されずに放置されているアパート(益城町)

 

原因は、解体する業者の不足です。

道路などに倒れてくる危険があるような倒壊家屋は優先して公費で解体されますが、危険性の少ない倒壊建物は後回しにされます。いまのペースでいけば全ての解体が終了するのは数年後とのことでした。ちなみに、熊本地震では罹災証明書で全半壊の認定を受けた建物は公費で解体してもらえますが、それでは自分のお金で解体すれば、といっても、公費解体が優先のため、私的な解体も全て制限されている状況なのです。

 

そういうわけで、建物の解体すら終わっていないのですから、そこに再度家を建てるということはまだできない被災者がたくさんいるわけです。

 

これが熊本に起きている現実で、仮設住宅の入居者が入居期限の延長を求めるのはしごく当然のことです。

 

ただし、応急仮設住宅にいる人は、それでもまだましかもしれません。なぜなら、過去の事例もそうであったように、応急仮設住宅は本来の2年の期限をすぎても柔軟に延長対応がされるため、仮設住宅から直ちに追い出されるということは考えられません。

むしろ心配なのは、みなし仮設住宅に入居している被災者です。

大きな地震が起きると、自治体が建設するプレハブなどの応急仮設住宅だけでは数が足りないので、みなし仮設といって、自治体が民間の賃貸住宅を借り上げて、それを被災者に無償で提供するという形を並行してとります。これをみなし仮設といいます。

このみなし仮設は、民間人が大家さんですから、通常の応急仮設住宅のように話は簡単ではありません。

このみなし仮設に住んでいる被災者の方も、今後の住まい確保が難しいことは同じです。

では、このみなし仮設に住んでいる人が、2年後以降も引き続き恒久的な住まいが確保できるまで住み続けたいと思ったときはどうなるのでしょうか。

熊本市のHPによれば、

Q11:最長2年ということだが、市の借上げ契約が満了したあとも同じ住宅に住み続けることはできるのか?
A11:基本的には、2年間の契約満了と同時に退去していただきます。
ただし、貸主の了解が得られれば、個人契約(通常の入居者と貸主の賃貸借契約)も可能です。

ということになります。

つまり、大家さんが「まだいてもいいよ」といってくれればその後は賃料を自分で払うことになりますが住み続けることができますが、そうでない場合には明け渡しを求められる可能性があるということです。

こちらの問題の方が深刻度は高いですから、今後の動向を注意深く見守る必要があります。

国、自治体による施策が絶対に必要です。

 

静岡市清水区 中央法律事務所

弁護士 永野 海

 

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