バウムクーヘンの地層(大島町)
死ぬまでに一度はみてみたいと思う地層がいくつかありますが、その1つが「バウムクーヘン」と呼ばれることもある地層。
それが伊豆大島(東京都大島町)にあります。
遠いようで、この海の上を飛ぶように走る高速船に乗れば、熱海から最短で30分強で到着します。
静岡県民にはとても身近ですね。
そんな身近でも、いざ島に到着すると、ハワイのような、沖縄の離島のような、とても遠くまできたかと錯覚する非日常の景色に驚きます。
大島一周道路をレンタカーで走っているとみえてきました。
バス停の名前も、「地層断面前」!
バス停の看板もバウムクーヘンに(^^;
バウムクーヘンが道路の遥か先まで続いています。
一生かかっても食べきれないほどです。
長さは630mにも及ぶようです。
これは火山島である伊豆大島の歴史を刻む年輪のような地層といえます。
現地看板がわかりやすいです。
およそ150年周期で発生する大規模な噴火の度に、スコリア(三原山のような玄武岩質の溶岩が生む黒い軽石)や火山灰がほぼ均等に堆積し、こうした年輪を刻んでいます。
灰色っぽいのがスコリアの層、褐色が火山灰の層、焦げ茶色の層は、噴火と噴火の間に堆積した土壌の黒ボク土でしょうか。
150年程度の周期のスコリアと火山灰の層が、このみえるところだけで、100層以上あるそうなので、掛け算で、1万5000年以上のこの島の歴史を刻んでいる地層ということになります。
普通にみると、地層が褶曲(しゅうきょく)しているように見えますが、さにあらず。
考えてみれば、この過去2万年という単位で、これだけ褶曲するような圧縮を地層が受けることは考えられないので、納得です。
ではどうしてこんな地層になっているかというと、もともとあった傾斜のある地形に沿って、均等にスコリアや火山灰が堆積した結果ということでした。
これだけの地層の情報があると、過去の三原山がどのような噴火活動を繰り広げていたかを大いに教えてくれますね。
この地層をみると、あることに気が付きます。
なんかおかしいですね?
そうです、下の地層が切られて、その上に新しい地層が堆積しています。
下と上の地層がつながっていないんですね。
地層の不整合です。
これは、下の地層が堆積した時には海の中で堆積していたところ、そのあとに、氷河期などで海面が下がり、地層が陸化します。
陸に上がると、雨や風の影響でどんどん地層が侵食され削られていきます。
その後、また縄文時代のように、温暖な時代で海水面が上がってくると、同じ地層がまた海の中に戻ることになります。
海の中に戻ると、地層の侵食が止まり、地層の堆積が再開されます。
そういう出来事の結果、こうした不整合な地層が生まれるわけです。
ここの地層断面は、定期的に重機でメンテナンスもされ大事に保存されていますので立入禁止ですが、一部地層に触れる部分もあります。
灰色の層の中には、たくさんの火山岩の礫が混じっていました。
世界的にも有名なこのバウムクーヘンの地層。
実は身近に訪れることができますので、そろそろくるであろう次の三原山の噴火の前に、ぜひご覧になってもらいたいと思います。
同時に、三原山が100年200年に一度は、火口から3km以上離れた場所にこれだけのスコリアなどを堆積させる大噴火を起こしているということを改めて知って防災意識を高めてもらえればと思います。
平成31年4月
弁護士 永野 海