神奈川県・丹沢の枕状溶岩 ぶらり旅
「南の海からきた丹沢ープレートテクトニクスの不思議ー」(神奈川県立博物館編)とカメラを片手に丹沢を訪問しました。
静岡からだと御殿場から小山町へ,その後「道の駅山北」を右手にみながら河内川沿いの県道76号線沿いを北に。
河内川の河原の石からしてすでに普通ではありません。
丹沢はこのあたり。
伊豆半島の付け根付近です。
丹沢湖に到着。
丹沢山地が,フィリピン海プレートに乗って南の海からやってきて,あるとき日本列島に衝突したという,その証拠物を見に行く旅です。
目印は丹沢湖畔にある丹沢湖ロッヂ。
ここを東につながる山道に入っていきます。
写真奥に進みます。
そうすると,すぐにこの小菅沢橋がみえてきます。
ここが目的地です。
目指すは枕状溶岩の露頭!
地図でいうとこんな感じ。
写真右の赤い点が,枕状溶岩がある位置。
その手前に道路が川を横切っていますね,そこがさきほどの小菅沢橋です。
小菅沢橋の南側から河原におります。
この日は水量が少なく安全性に問題ありませんでしたが,山間部ですので,くれぐれも水量にはご注意を。
土砂崩れの跡もありました。
丹沢湖にそそぐ支流の左岸(下流に向かって左側)を上流方向に歩きます。
滝が目印になります。
この川の河原の石はほとんどがこの薄緑色(写真だと少しわかりにくいですが)で,幻想的です。
ものの本によると,緑簾石と曹長石の影響でこのきれいな薄緑色になっているとの解説がありました。
そして,枕状溶岩発見!
枕状溶岩というのは,海底火山から噴火した(粘性の低い玄武岩質の)溶岩が海水で急冷されて団結しいくつも枕のように積み重なったものです。
丹沢のこの場所に枕状溶岩があることが,丹沢が南の海からフィリピン海プレートに乗ってやってきて日本列島に衝突した1つの証拠とされています。
富士山型の枕状溶岩と滝とのコラボレーション。
丹沢山地は,伊豆半島が日本列島に衝突したものという考えが主流になったあとも,しばらくは本州側のものと思われていました。
しかしいまではこの丹沢山地も南の海から日本列島に衝突したものという考えが通説になっています。
「日本列島の生い立ちを読む」(斎藤靖二・岩波書店)によると,
丹沢山地を作っている地層や岩石は,1500万年前から1000万年前ごろまでは伊豆半島と同様,ほとんどが火山噴出物からなっていて,大陸地殻の代表である花崗岩類が起源となる破屑物(さいせいぶつ・岩石が壊れてできた破片)がありません。
そのため,現在の伊豆七島のような,火山弧の一部として海面に顔を出す海洋島だったと考えられるのです。
この丹沢の火山噴出物の地層には,大型有孔虫やサンゴの化石も含まれていますので,南の温かい海にあった島とも推測できます。
美しいですね。
丹沢の火山噴出物の一部は,圧力と熱で変成作用を受けて結晶片岩になっています。
そのため,海洋の島だった丹沢の地塊は,関東山地に向かって地下深くに沈み込んでいったものと考えられるようです。
そして,地下深くの高圧と熱によって岩石が変成して,別の種類の岩石になったということですね。
丹沢の場合,地下10kmより浅い場所で,300℃以下の熱で変成されたものと考えられています。
さらにその後,丹沢山地の中央部に,石英閃緑岩のマグマが上昇し,貫入したことで山地が隆起し,周囲に大量の礫を供給することになったとも考えられています。
そうした機序によって,丹沢山地もフィリピン海プレートの沈み込みによって,だいたい600~550万年前ころに本州に衝突してきたと考えられています。
丹沢が本州に衝突したことによって,現在の小仏山地と丹沢山地を境界とする藤野木ー愛川構造線のような逆断層ができました(日本海の拡大と伊豆湖の衝突ー神奈川の大地の生い立ち,より。以下同様)。
伊豆弧の本州への衝突は1500万年前ころからはじまり,いまでも続いています。
衝突する度に逆断層地形を作っています。
伊豆弧の衝突が続くたびに,逆断層の生じる位置は南側に移動して,現在は,過去にご紹介した神縄(かんなわ)断層の位置にあります。
そして,現在も,伊豆半島の南にある銭洲(ぜにす)海嶺の南側で,巨大な逆断層が形成されつつあるようです。
ダイナミックな話ですね。
枕状溶岩に戻りましょう。
クマの手みたいです。
もちろん,学問ですから諸説ありますが,海底火山噴火の痕跡がこんな山奥の丹沢山地のなかで堂々とみられる不思議を楽しみましょう。
こちらはレモン型? ラグビーボール型?
実はこうした露頭も,地球,地学を愛する有志の方々による定期的な岩石の清掃作業などにより保全されています。
ありがたいですね。
丹沢は,首都圏からも静岡からも比較的近い場所にあります。
こんな場所で,日本列島形成の,あるいは地球の数百万年,数千万年単位のダイナミズムを感じることができます。
しかし,だからこそ逆断層の構造線が複数走り,常に地震その他の自然災害の脅威にさらされている場所でもあります。
様々なことを感じてもらえればと思います。
平成30年3月
静岡市清水区 弁護士永野 海