第一テレビの防災番組で、家具の固定による壁穴と原状回復義務の問題についてお話しました
4月27日第一テレビ「地震防災チェック」より画面キャプチャ。
上の各テロップに若干補足します。
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阪神淡路では死者の1割、負傷者の約半数が家具の転倒によるものと言われています。
また、家具固定の最も確実安全な方法は、壁へのネジ固定です。
住民に家具の固定を自治体として推奨しながら、経済的に苦しい人も少なくない公営住宅の入居者に、退去時、家具固定にできた壁の穴について原状回復を求めるのは、背理ではないかと思います。
今のままでは、復旧費用をおそれてネジで家具固定をしようとはなかなか思えません。
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自治体によっては、もともと家具の固定による壁のネジ穴については(事実上)原状回復を求めていない、というところもあると思います。
しかし、そのことを「入居のしおり」でわかりやすく明記していなければ、住民はそのような自治体の内心については知る由もなく、壁に穴をあけてまで家具を固定しようとは思わないでしょう。
「入居のしおり」にわかりやすく原状回復免除を明記することが必要です。
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全ての政策には、コストと便益が意識されなければなりませんが、家具の固定の際にできた壁のネジ穴の原状回復免除による財政負担は、極めて僅少です。
他方で、守られるのは多くの住民の命と身体の安全です。
非常に合理性のある自治体政策ではないでしょうか。
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ゆくゆくは、民間の賃貸住宅でも、国交省のガイドラインが見直され、エアコンのビス穴と同様に、原状回復の対象から外されることを期待したいです。
平成31年4月30日(平成最後の日)
弁護士 永野 海