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静岡の令和4年台風15号から1年(振り返り)

静岡の台風15号から1年。支援弁護士の立場としては、他との連携の広がりと深化を強く感じる災害でした。

市町、県、士業間、日弁連、弁護士会連合会、他地域の弁護士、災害NPO、ボランティア、社協、支え合いセンター、メディア、政党会派や議員の先生方、などなど。

上記の連携先どれ1つでも1つの論文が書けそうなぐらいに、強い連携が生まれ、それが日々の被災者支援や、制度改善の取組みにつながったと思います。

本当にありがたく、また誇らしくも思いますが、

・毎日相談ブースが開設できたのは

・いまも毎日電話相談を続けられているのは

・いまも頼まれれば現地に出動できるのは

・いまも出張相談会ができるのは、

すべてそれをしてくれる人間がいるからです。

理念では現実の支援はできません。また数名の有志しかいなければ、無駄ではないにしても、「モデル的な支援」しかできません。

今回の15号では、現地相談だけでも、延べですが、1500名以上の士業の先生方が現地相談ブースに入ってくれました。

そのうち弁護士が約600、約900が弁護士以外の司法書士さん、建築士さん、税理士さんなどの他士業です。

弁護士延べ630人(枠)のうち、220人(枠)は、静岡以外の他の都道府県の弁護士が、静岡に応援で助けに来てくれたことで、毎日の支援が実現できました。

弁護士以外の士業については、ご協力の多い順だと、司法書士会280、建築士会230、行政書士会180、税理士会130という延べ人数になります。

でもですね、たとえば行政書士会の延べ180人というのは、実人数でいうとわずか14名、税理士会に至っては、130枠を6人の先生方で負担されています。

行政書士の14人というのも、一人で60枠以上入ってくださる先生などがいての180枠ですから、数人にほとんどの負担が集中しているのが現実です。

他の士業も傾向は同じです。そして、弁護士は、3分の1を他からの応援でやりくりしていることは前述のとおり。

今後毎年水害が続いた場合に、同じように人が集まってくれるか、大いに不安があります。

継続的なボランティア支援をする、というのは、それだけ大変なことだからです。

楽しい、やりがいがあると感じられなければそもそもできませんが、それだけで続けられるものでもありません。

また、南海トラフ地震のような災害で、水害と同じような支援体制がとれるわけもなく、その点の大きな不安もあります。

個人的には、IT技術、オンライン技術の活用が不可欠だと思っています。

特に、行政側にその感度と通信環境の整備が必要です。

次に、台風15号の課題。

今日の静岡新聞の一面は、誰一人取り残さないぞ、という災害ケースマネジメント的な視点で振り返りをしています。

https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1322498.html

大沢さんや、松山さん、まりこさんが大事なコメントをしています。

最後の一人まで、被災後元の生活に戻れていない人をちゃんと見つけ、みんなでできる限りの支援につなげる災害ケースマネジメント。

文句なしに、大切です。

でも、災害ケースマネジメントって、災害復興支援でいえば、応用編です。

残念なことですが、日本の多くの地域は、応用編どころか、基本的な被災者支援すらできる体制にない、できる発想にないのが現実です。

だって、そもそも連日開催の水害の現地専門家相談窓口すら設置できない都道府県が、むしろ大半なのが専門家支援の面だけみても、現実なんです。

この基本的な相談窓口の設置すらできないのに、どうして災害ケースマネジメントができるんですか?

個別訪問するんですか?

ケース会議できるんですか?

(全国的な視点でいえば) まずは、基本が確実にできる体制をとってから、災害ケースマネジメントを語ってほしい、という少しいじわるな感情も僕のなかにはあります。

弁護士などの専門家だけでなく、行政的、福祉的にもそうで、たとえばごみ屋敷や多頭飼育や空き家問題。

日本中に溢れている問題ですが、災害時も、結局、こうした問題と共通するような、あるいは同一の平時の課題が、最後には残ってくるわけです。

平時、日ごろですら解決できていないのに、災害時だけ、災害ケースマネジメントという言葉をつかえば、魔法のように解決できるわけもなく、

結局は、解決できる方法を日ごろから作り出しておくことが、もっとも大切になります。

当たり前の話ですが。

先の静岡新聞記事もそうした視点で描かれていますね。

そして、基本ができていないというのは、実は静岡も同じです。

https://www.chunichi.co.jp/article/774676?rct=h_tokai_news

こちらは、中日新聞の今朝の15号1年の記事(有料記事でごめんなさい)。

記者の方に、「1年を振り返って、最初から現在までで一番伝えたいことはなんですか?」

と聞かれたので、僕は、

いまの災害ケースマネジメントの問題ではなく、むしろ、初動の問題の方を反省するべきとお話し、それを記事にしてくれました。

初動というのは、行政による被災実態の調査、把握の問題です。

当たり前ですが、自然災害で、もっとも人間の命に関わるのは、発災直後です。

静岡では、行政全体の目が断水にばかりそそがれ(まわりの当事者も同じです)、浸水して泥だらけの家にいるひとびと、家を追われた人々に向けられる意識が圧倒的に不足していました。

僕は、1万件の全戸訪問なんて求めないから、まずは、発災直後に、浸水エリアをもれなく職員が調査にまわってほしい、と思います。

そして、それは外からみる調査ではなく、ちゃんと家をノックして、お話をきき、家のなかの状態を見せてもらい、いま何がおきているのか、何に困っているのかをその目と五感全部で把握する調査です。

そのためには、どこが浸水してそうなのかの把握がまずは重要です。

ちゃんと科学技術を活用して、発災直後の水害被害状況の把握手段を事前に手に入れておいてください。

その上で、そのエリアを上記の形できちんと調査し、いまおきていることを把握してください。

把握できたら、実際の支援につなげてください。

最初に必要になるのは、多くの場合、安全な住まいです。

知る限り、この最も基本として大事なこと、発災直後に、いま何がおきているかを正しく把握し、必要な支援策の手を打つこと、これができていたのは、磐田市だけではないでしょうか。

もちろん、静岡市の被害エリア、被害世帯数は、磐田市よりもはるかに大きかったです。

だからこそ、次の災害でも、広範囲の被害でもそれが可能となるシステムについて十分な検討が必要になります。

自治会からの情報を待つ、みたいな受け身の姿勢で情報収集することだけは、やめましょう。

15号1年の振り返り、雑感でした。

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