私が石に興味をいただくことになったのには2つの理由があります。

1つは、災害問題にかかわるようになり、なぜ地震や噴火が起こるのかというところを詳しく学んでいくうちに、プレートテクトニクス理論に行きつきました。この理論を学ぶなかで、海洋地殻が玄武岩質でできていること、大陸地殻は花崗岩質であること。また、マントルは橄欖岩(かんらんがん)でできていることがわかり、これらの岩石についてもっと知りたいと思ったこと。

もう1つは、同じく災害問題を学ぶなかで、災害痕跡地を訪問するようになり、断層や地層を見る機会が劇的に増えました。それぞれの断層や地層の解説をみると、砂岩、泥岩、頁岩(けつがん)、緑色片岩など様々な岩石が登場します。言葉がでてくるごとに座学で学ぶんですが、もっと体系的、本質的に岩石のことを知りたいと思ったことです。

石には膨大な種類があり、著者もこの本のなかで何種類あるかわからないぐらい、といいます。

それだけの数がある石を羅針盤なく1つ1つ学んでいくことはなかなか難しい。そんななかで、著者は、一流の予備校講師よろしく、読者に丁寧に配慮し、逐次安心させながら少しずつ少しずつ石の世界に導いてくれます。

最悪、世界を大きく構成する3つの石(マントルの橄欖岩、海の玄武岩、陸の花崗岩)さえある程度理解できればいい、と安心させてくれることで、時折難しい言葉に面食らいながらも、最後まで石の世界を学びきる(読み切る)ことができます。

石について学ぶには最高の本だと思います。

石について学ぶことは宇宙の成り立ちや地球の成り立ちを学ぶことでもあります。

むしろこの本は石という身近な存在から、宇宙や地球のダイナミックな成り立ちを知るための本といってもよいでしょう。

石は鉱物からできています。鉱物は元素からできています。そのため、この本の冒頭では、ビックバンから太陽系、地球の成り立ちの話まででてきます。

ビックバンのあと、最初に存在した元素は、水素とヘリウムだけでした(元素記号の最初ですね)。

水素とヘリウムはやがて集まり塊になり星ができます。星(恒星)のなかは高温高圧のため、やがて2つの水素原子がくっついてヘリウムができます(核融合反応です)。その後も、ヘリウムが2つくっつきベリリウム、ヘリウムが3つで炭素、という具合にどんどん新しい(重い)元素が生まれてきました。

しかし、核融合反応でできるのは原子番号26番の鉄までです(へー、という感じ)。核融合による温度圧力ではそこまでが限界、と。

鉄より重い元素ができるのは、さらに後のこと。星が一生を終え超新星爆発ができるときのとてつもない高温高圧によってです。これによって原子番号92番のウランまでが生まれました。

超新星爆発によってこれらのウランまでの元素が宇宙に飛び散ります。それらがまた集まって新しい星ができるのです。そうして太陽系が生まれ、地球が生まれました。だから地球にもわれわれ人間にもこれら全ての元素が含まれているのです。

宇宙も地球も人間もすべてつながっているんですね。

地球には岩石を作る鉱物(酸素やケイ素)が豊富です。しかし、太陽系のすべての惑星にケイ素があるわけではありません。ケイ素があるのは、地球以外には、水星、金星、火星だけです。

太陽ができたとき、遠心分離機にかけたように、重い元素ほど太陽の近くに集まり、軽い元素ほど太陽から遠くまで飛ばされました。

その流れでちょうど地球にはたくさんのケイ素が集まるようになり(地球あたりに集まる程度の重さの元素だったということです)、そのため地球は岩石が豊かな星になりました。

他方軽い元素でできた惑星はガス惑星になっていますね(もっと太陽から遠いと氷の惑星になっています)。

そんなこんなで、地球の石を考えると、ビックバンまできれいに遡れるわけです。

視点を地球に戻すと、地球の体積を構成しているのは、橄欖岩が82.3%、玄武岩が1.62%、花崗岩が0.6%、ほかは、金属が15.6%だけですから、看板に偽り無しで、3つの石を知れば地球がわかるというのは嘘でもありません。ちなみに、ここでの「金属」というのは、マントルのさらに奥にある、地球の中心、核を構成する金属です。

そして、この3つの石についても、最初にできたのは橄欖岩で、この橄欖岩から玄武岩が生まれ、玄武岩から花崗岩(御影石とも呼ばれますね)が生まれますので、すべてはつながっています。

地球上の生物の誕生にもこの石が大きくかかわっています。

地球のはじまりのマグマオーシャンの時代から、だんだん温度が冷めてきて、地球上に雨が降り、海ができるようになります。

マグマオーシャンは橄欖岩を溶かしたどろどろの海ですが、この橄欖岩に「水」が入ると、鉄と水素ができます(残された石は蛇紋岩に変身します)。

この水素を栄養源とする生物が生まれたのが地球上の最初ではないかとされているのです。

すごいですね。

きりがないのであとは本書を読んでいただくとして、ご覧のとおり、石、特にこの3つの石を学ぶことで、宇宙も地球も生物も海も陸もよく理解することができるようになります。

災害に備える上でも、敵を正しく知ることがとても大切です(こじつけのように思われるかもしれませんが、たとえばなぜ津波が発生するのか、ということをプレートテクトニクスから正しく理解していないと、誤った防災対策、防災対応をすることになりかねませんので、あながち冗談でいうわけでもないのです)。

ぜひ本書を楽しく読み、地球のことに詳しくなってもらえればと思います。

 

静岡市清水区 弁護士 永野 海