先日、津久井先生からご紹介いただき購入させてもらった本。

まとめておきます。

 

・借上復興住宅とは、被災者のために、自治体が民間オーナー(URなど)からマンションなどを借り上げ、提供した復興住宅(公営住宅)のこと。通常の公営住宅と同程度の負担となるよう、差額は国と自治体が負担。所得に応じた減免もあり。

・阪神淡路では、被災者に少しでも早く落ち着ける場所を提供するための画期的な公営住宅制度といわれた

・自治体は、借上復興住宅は当初から20年の期間で民間から借り上げているとして、入居者に、他の市営住宅等への住み替えを求めている。一部明け渡しと損害賠償訴訟も。

・被災者は20年の期限を認識できておらず、入居許可証にも期限記載はない。一部の説明冊子には20年の借り上げとの表現もあるが、20年後退去とは記載されておらず、当時の自治体の首長や幹部も、制度や対応の不備を認めている(43P参照)

・特に通常の復興公営住宅には期限がないことから、大きな不均衡が生じている。当初説明を受けていない被災者とすれば、知っていれば復興公営住宅に入居していた、となる。

・20年住むとそこにコミュニティが生まれる。ボランティアや各種団体もコミュニティ作りと維持発展に尽力してきた。生活基盤もできる。

・20年経ってからの転居は、コミュニティやかかりつけ医などの生活基盤を失い、高齢者や障害者の転居に伴う心身の負担など、経済問題に限らない問題が生じる

・みなし仮設や借上復興住宅は、人口減少の日本(特に地方)では、新規建設の復興公営住宅と比べて、初期費用の少なさや入居速度のメリットだけでなく、将来の空き家問題に対して柔軟な供給量調整や、無駄な建物を作らないですむというメリットもある

・そうしたメリットの多い借上復興住宅を今後も生かすには、少なくとも他の復興公営住宅と同一の取り扱い(退去期限を設けない)ことはとても重要

 

以上は私の偏った視点でごくごく一部をまとめたものにすぎませんが、これだけの内容の本を22歳の市川さんが執筆されたことに感銘を受けました。

 

昨日のNHKスペシャルでも首都直下地震の際に、みなし仮設を活用しても圧倒的に被災者の住宅が不足してしまうことへの言及がありました。

南海トラフでも、借上復興住宅の活用が大前提となります。そして、被災者の生活再建や復興支援の上でもっとも大切なポイントの1つが、コミュニティ問題のはずです。せっかくのよい制度が、かえって築き上げたコミュニティを失わせることになることは、あまりにばかばかしいものだと思いました。

 

静岡市清水区 中央法律事務所

弁護士 永野 海