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地震で隆起したグリーンタフ(千畳敷海岸)

青森県西津軽郡深浦町にある千畳敷海岸です。

青森県の日本海側です。

大きな窓が特徴のリゾートしらかみの停車駅です。

この千畳敷で特急は15分停車し、乗客はしばし海岸に降りることもできます。

リゾートしらかみと駅にそびえる凝灰岩の海岸段丘。

線路沿いに連なります。

切り込みを入れたマンゴーのような大きな凝灰岩の岩体。

列車の停車時間だけたくさんの人で賑わいます。

海岸全体が薄い緑色をしているのがわかると思います。

緑色凝灰岩(ぎょうかいがん)といいます。

緑色凝灰岩は英語では「グリーン(緑色)タフ(凝灰岩)」といい、数十年前は特に熱心に研究がなされた分野です。

立派です。

右に少し写っている列車と比べると大きさがわかります。

写真では少しわかりにくいですが、肉眼では、もっと薄緑色をしています。

足下は全て緑色凝灰岩。

興味がない人にとっては、単に、でこぼこしたコンクリートのような歩きにくい海岸です。

土間そのものです。

津軽の殿様が、ここで千畳の畳を敷かせ大宴会をしたという、沖縄の万座毛っぽい地名由来ですが、このあたりだと畳も敷きやすかったでしょう(笑)

このあたりだと、侵食されすぎて畳は敷けません。

青森や秋田の日本海側は広くこのグリーンタフに覆われていますが、なぜこの海岸だけこんなにも広く露頭しているのか。

それは、1793年に発生した寛政の西津軽地震(M6.9~M7.1)によって、2~3メートルの規模でこのあたりの海食台が広く隆起したからなんです。

この地震では、津波も発生し犠牲者もでています。

津波の高さは、鰺ヶ沢や深浦で3メートル前後。

ちなみに、同じ年には、寛政地震とよばれる宮城県沖地震(連動型)の海溝型地震(M8クラス)も発生しています。

この西津軽地震は個人的には少し不思議な地震です。

(千畳敷海岸の断層)

海のプレートの潜り込み帯での海溝型地震のエリア、たとえば御前崎でも室戸岬でも、こういうところでは、海溝型地震によって海食台が隆起するというのはよくわかります。

しかしこの場所は海溝型地震が起きる場所なのか、と。

これは、政府の地震調査研究推進本部が作成した海溝型地震の図です。

実はこの青森秋田沿いにも赤いラインが入っています。

日本海東縁部と呼ばれています。

このあたりは恐らく地球科学の分野でもまだ定説がない状況ではないかと想像しますが、この青森県沖のような場所は、ユーラシアプレートと北米プレートはこれまでは衝突し合うだけのプレート境界だったのが。

(地震本部作成図を引用)

いまや、ユーラシアプレートが北米プレートに潜り込む動きがはじまっていて、数百万年後には海に溝ができる(浅いうちはトラフ、6000mを超えれば海溝)と解説している文献もあります。

西津軽地震は、日本海東縁部で発生した海溝型地震で、それによって海食台が隆起したと考えてよいのか、カモメさん教えてください。

そして、もう1つのグリーンタフ(緑色凝灰岩)の話。

この隆起した海食台は、グリーンタフの地層。

グリーンタフというのは、基本的に、海底火山の噴出物(特に流紋岩質の火山砕屑岩)が海底に堆積し、その後、「熱水」や「海底での埋没続成」による変質作用を受けて、火砕岩の中の、輝石や角閃石が緑色の緑泥石に変化したものとされています。

グリーンタフの地層があるということは、そこで(プレートは移動するのでいまのその場所とは限りませんが)、その昔、活発な海底火山活動があったことがわかります。

(黒色と白色の凝灰岩が互層に。様々な種類の火山噴出物があったことがわかります)

基本、流紋岩質の火砕岩からできているようです。

白っぽい流紋岩質で構成されているので薄い緑なのでしょうね。

2000万年前とか1500万年前という時代、それまでアジア大陸の東の端にくっついていたいまの日本列島は、日本海(背弧海盆)の拡大という大事件によって、とてつもない地殻変動の時代を迎えました。

その時代には、激しい地殻変動のなかで、マグマの活動も盛んで、たくさんの海底火山活動が起きました。

この千畳敷海岸などでみられるグリーンタフは、日本列島が大陸からわかれ現在の場所に移動した大移動の痕跡を示すものといえると思います。

なんとなく調べていると、グリーンタフの研究は、プレートテクトニクス理論の誕生と発展と反比例するかのように不活発になっていたように感じました。

http://www.ueis.ed.jp/kyouzai/h27_rika/naritachi/narimain.htm(宇都宮市教育センターさん資料)

それは、グリーンタフが伊豆半島にまで分布していて(伊豆石が有名)、プレート理論(特に伊豆半島の衝突説)にとって都合がわるいからなのか(笑)、グリーンタフの研究が、既にプレート理論に取って代わられた地向斜理論の中で熱心だったかなのか、その他の理由なのかは不勉強でわかりませんが・・・。

*グリーンタフは、栃木県の大谷石(おおやいし)もとても有名ですね

(流紋岩質の緑色凝灰岩からなる海岸段丘)

グリーンタフの話はそのぐらいにして、地層観察に戻ります。

この緑色凝灰岩の地層は、地層堆積の際に、さまざまな岩石を取り込んでいて、それらを観察するのも楽しいです。

緑色凝灰岩が大きな緑色凝灰岩の礫をとりこんでいます。

というか、侵食から取り残されてでっぱっただけかもしれません。

これもきれい。

クッキークランチのように、グリーンタフの礫が取り込まれています。

こちらは玄武岩のような礫を取り込んでいます。

自然の宝石箱のようです。

千畳敷海岸の石ころはとてもカラフルです。

グリーンタフもあれば、十分量の酸素で酸化した鉄分に富む岩石も(これも凝灰岩?、玄武岩?)。

流紋岩(二酸化ケイ素の成分が多い)や流紋岩質の凝灰岩は様々な色に変化するようです。

カラフルな石ころたち。

酸化した鉄分の赤い石の岩塊。

海までのグラデーションさえカラフル。

海の透明度もすばらしいです。

地層までカラフル。

手前から、赤茶色、白(薄緑)、こげ茶色。

様々な色の地層が点在します。

このあたりはかなり鉄分が酸化していますね。

当時の海中でどんな火山活動があり、こうした地層が生まれたんでしょうか。

侵食されたサンゴ礁の石灰岩のようです。

線路沿いには、緑色凝灰岩の間を滝が流れています。

どうでしたか千畳敷海岸。

知識がなければ単なるコンクリートの土間。

少し学べば、地震による海岸隆起や、日本列島誕生時の痕跡まで感じ取ることができるとても貴重な場所です。

美しく霞む津軽半島。

旅の前に、ひと調べして、ぜひ地球とのひとときの会話を楽しんでみてください。

平成30年10月訪問

弁護士 永野 海

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