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「ぼうさいこくたい」で考えるジオパークと防災の問題

@以下、土曜日の朝から長文です

今日明日は「ぼうさいこくたい」です。行けないのが残念ですがこのジオパークネットワークのブースが気になります。

http://bosai-kokutai.jp/organizations/1558/

大地の恵みを知り、地元を愛し、怖がらせない防災

(HPの説明文)「ジオパークは、地球科学的価値のある地質遺産を大切にし、教育や防災だけでなく、科学的根拠を持って観光にも活用し、地域の持続可能性を高める活動を行っています。絶景はたいてい過去の激しい自然現象の痕跡。時に災いをもたらす大地の営みが人々の日常には恩恵をもたらします。「危ない、怖い」だけの防災では、地元を嫌いになり観光客も来ません。ジオパークの活動をもとに、地域防災活動に役立つ事例を共有します。

 

タイトルは、まさに片田先生的なものですが、ジオパークの皆さんには、まだ抽象的なような気がする、「自然との共生」とか「自然の恵みと災害の表裏」のような概念を、”具体的な”、人の命を守る防災につなげるアイデアをだせるか問われているように思います。

ジオパークをアピールし、人が訪問して、地域活性化、これはそんなに難しくないでしょう。でも、そこから何歩も進めた、訪れた人が一時的な観光に終わらず、本当に地球に関心を持ちその後の生き方にまで影響を与えること、そして、命を守る防災の実践にまでつなげてもらうことは簡単ではありません。

 

地震や津波や土砂災害などの自然災害を、地球や、日々の生活から切り離した個別の厄害と考えてしまうと、災害用リュックサックを買うとか、大きな災害から当面だけお風呂に水をはっておく、みたいな防災で終わってしまいます。
それでは、毎年くる台風ぐらいにはある程度備えることができても、30年に一度、100年、ましてや1000年に一度の自然災害には到底備えることができません。

 

しかし一部ヨーロッパのような安定大陸にある国と違って、変動帯の上にある日本では、地震にせよ、津波にせよ、噴火にせよ、大規模災害は、地球科学のルールに基づいて、必ず定期的にやってきます。自分の生きている時代にこなくても自分が生んだ子どもやつながる孫の時代には必ずやってきます。大切なのは、地球という1つの巨大な生き物の腕の中で抱かれるように生きていることを、大きな視点、大きな時間軸で、理屈でなく、身体全体で感じることです。

 

地球がどんなものなのかということを身体全体で知ることで、はじめて、自然災害と少し向きあえるようになります。その次に、ようやく、たとえば、海沿いに住んでいる人は、地面が揺れたら、とにかく無条件に高いところに逃げる、とか、そうした避難ができるような地域社会を常に作っておく、という動きにつながっていきます。

 

それは、もはや、「防災」、とかではなく、それこそが生活そのものというか、生きることの一部として当然に災害から身を護ることがDNAに刻まれる、ということだと思うし、そうでなければ人が命を大切に守り生きていくことはできません。

 

アスファルトに囲まれ、毎日電車に揺られて生活していると、地球どころか、自然すら感じられなくなります。
ジオパーク、ジオサイトは、この現代社会で、地球と一人ひとりを結びつけるとても貴重な窓口です。

 

一本の草木に宇宙をみるというような禅の発想と同じで、一片の地層の露頭に地球をみる、台地の隆起痕跡にプレートの力のすさまじさを感じる、地球痕跡としてのジオは、いわば、どこでもドアであり、タイムトンネルです。

 

私が海沿いのジオパークの館長だったら、片田先生とコラボして自然とともに生きる津波防災の作法のわかりやすいパネルを作って最後にみられるように最低限するだろうし、火山のジオパークの館長だったら、鎌田先生とコラボして、同じようなパネルを作って、地球の中で生きていく、そのなかで海の近くで生きる、火山の近くで生きる、とはどういうことかということを、クイズや、スタンプラリーや、マンガや、映画や、夏休みの自由研究や、ありとあらゆるものを使いながら、子どもたちにわかりやすく伝える取り組みをしていくでしょう。

 

それを学校を含めた地域全体が力をあわせてやらないといけない。たとえば、片田先生「命を守る教育」という本の巻末には、時間が限られる学校の中で、各科目と津波防災を組み合わせる工夫がなされた教材が公開されています。
たとえば、小学校低学年の算数の問題

「津波の高さは釜石湾で3メートルになります。では、3メートルは何センチメートルでしょうか」

これが3・4年生になると、「津波は第二波、第三波と何度も押し寄せてきます。そのため、最低でも三時間は避難場所を動いてはいけません。三時間は分であらわすと何分でしょうか」
という問題になります。

 

すべての生活の中にあたりまえのように自然との共生の視点が取り入れられて、はじめて、少しずつ身体全体の知識になっていきます。

平成30年10月

弁護士 永野 海

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