亜熱帯の珍しい円錐カルスト(沖縄県国頭郡本部町)
沖縄本島の北部にある、本部町(もとぶちょう)には、富士山のようなきれいな円錐形の山がみられます。
円錐カルストと呼ばれる、石灰岩でできたカルスト地形の一種です。
国内ではこの場所でしかみられません。
沖縄で石灰岩といっても、これはここで生まれた琉球石灰岩ではなく、2億年前に赤道付近の海で誕生した石灰岩(サンゴなどの死骸が堆積してできた)です。
その石灰岩は海のプレートに乗って北に運ばれ、まず、アジア大陸の東の端にくっつきました(付加体)。
さらにその後、日本列島が形成された2000万年前から1500万年前と同じ頃に(おそらく)、アジア大陸から切り離され、この場所までやってきました。
1回目の引越し(赤道の海からアジア大陸へ)と、2回目の引越し(アジア大陸から南西諸島へ)を経て現在の琉球まで運ばれてきた石灰岩は、その後(おそらく)プレートに押され隆起し、このような本部(もとぶ)地方の山になりました。
山になったあと、石灰岩(主成分は炭酸カルシウム)は、二酸化炭素を含んだ酸性の雨に触れると溶けていきます。
これが、カルストという石灰岩ならではの特異な地形を生む原因です。
特に、沖縄のような亜熱帯の地域では、激しいスコールが降るので、激しい雨が勢いよく山の斜面を駆け降りるような形で石灰岩が溶ける(溶食)ことを繰り返すと、こうした独特の円錐形のカルストになっていくようです。
なぜ沖縄のこの場所に円錐形の石灰岩の山があるのか。
赤道からの2回の引越しと、この引越し先の気候による影響という、2億年の時間軸をぜひ感じてもらえればと思います。
2019年8月
弁護士 永野 海