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二上山博物館

引き続き奈良県にあるかつての火山、二上山。

二上山の噴火の歴史や痕跡については、前回のまとめをご覧ください。

二上山とどんづる峯

 

奈良県香芝市には、すばらしい博物館があります。

その名も二上山博物館。

 

二上山博物館からみえる二上山(にじょうさん)。

 

 

館内には、二上山に関係する岩石と、この岩石と密接にかかわる旧石器時代の文化に関する展示がなされています。

 

 

これはなんでしょう。

二上山が噴出した溶岩が固まったサヌカイト(特殊な安山岩)による楽器(石琴)。

 

サヌカイトは(讃岐の石が語源)、通常の安山岩と比べ、ガラス質の緻密な石基で構成されているからか、とてもきれいな高音を奏でます。

カンカン石と呼ばれる所以です。

これがサヌカイトの1つめの顔。

 

写真右がサヌカイトの原石、写真左は割った断面。

割るとこうした黒い姿をみせてくれます。

ガラス質なので以前愛知県の鳳来寺山でご紹介した松脂岩(しょうしがん・ピッチストーン)に似てますよね。

 

 

館内には、とても写真で収めきれないほどの展示があります。

3枚目は真っ黒な割った断面ですね。

 

 

サヌカイトといえば、日本において、香川県かこの二上山。

 

そして、サヌカイトは、ガラス質で、ハンマーなどで割るとナイフのように鋭い断面になります。

そのため、旧石器として大変重宝されました。

これが二上山が生んだサヌカイトの2つめの顔。

 

二上山は大量の火山灰を噴出し、火山灰が堆積した凝灰岩の地層も作りました。

そのため、館内には、鹿児島の姶良火山の火山灰による凝灰岩や火山灰そのものも展示されていました。

博物館のセンスがすばらしく、非常に楽しいですね。

 

サヌカイトによる石器と、人々の生活の展示も、地層・地学と文化との関わりが学べて楽しいです。

 

そして、この博物館の白眉(私見です)、二上山にかかわる美しい岩石たちの展示です。

こういうの家に作りたい。。。。

さて、一番からじっくりみていきましょう。

全て”二上山が生んだ岩石”ですからね。

 

1番、高千穂峡や豊後大野でもご紹介した溶結凝灰岩。

火砕流が堆積したあと自らの高熱で溶けながら圧縮し固まります。

 

2番、溶結していない単なる凝灰岩。

単なる火山灰の地層ではなく、凝灰岩という岩石になったということは、長い間、海や湖などの水中に堆積していたということです。

白いのは、ケイ酸の成分が多い流紋岩質の火山灰が元になっているからです。

 

3番、火山岩か溶結凝灰岩かどっちかと解説には書いてますが、グリーンタフのような凝灰岩に近いものに見えました。

 

4番、これがどんづる峯の表面に広がる地質。

軽石が火砕流や火砕サージによって流れ堆積したものです。

白いのは流紋岩質だから。

 

5番、これもどんづる峯でみられる岩石。

先ほどの凝灰岩と違い、火砕流が火山から噴出された火山岩の礫を内部に含んでいます。

 

6番、これは先ほどの凝灰角礫岩が、さらに高熱により溶解し固くなった岩石です。

 

7番、こちらは流紋岩。白いですね。

溶岩が固まった火山岩の1つである流紋岩と、火砕流堆積物である溶結凝灰岩の境目って結構難しいと感じます。

一応、これは流紋岩を名乗る以上、溶岩が固まった岩石です。

 

8番、さきほどからでている二上山の代名詞でもあるサヌカイト。

特殊な安山岩(溶岩が固まった岩石)です。

 

9番、サヌカイトに似た岩石、サヌキトイド。

サヌカイトと同じく、安山岩ですが、マグネシウムが異様に高いんですね。

マントルが溶けてマグマになるときに、水が混ざるとこういう組成になるようです。

日本海が拡大していまの日本列島ができたとき、プレートテクトニクスの凄まじい地殻変動の中で、日本列島の下にあるマントルに水が混ざる特殊な大事件が起きたんですね。

 

10番、これもサヌキトイド。

 

11番、これはサヌカイトではなく、石英安山岩(流紋岩質が多い安山岩)と説明されていますね。

複雑・・・。

 

12番、これも石英安山岩。

溶岩が流れたときの皺(しわ)がよくみえています。

面白いですねえ。

 

13番、へえ、玄武岩(マントルのかんらん岩にもっとも近い溶岩からの火山岩)もあるんですね。

ケイ酸が少ないので、白ではなく、黒くなるんです。

 

14番、これは石英安山岩。

玄武岩(黒)と流紋岩(白)の間の量のケイ酸濃度なので、中間色の鼠色っぽいわけです。

 

15番、へえ、どんづる峯には、松脂岩もあるんですね。

流紋岩室で、ガラス質です。

 

二上山の地層、一番下の基盤岩は関西らしく花崗岩。

大陸の岩石です。地下深くでゆっくりマグマが固まった岩石です。

その上に二上山などの火山活動による噴出物の地層が載っています。

 

地質図が右。

 

こうした石棺は、固くて加工しやすい、二上山が作った凝灰岩により作られました。

ブラタモリのローマ編でも、凝灰岩がローマ時代の構造物を作っていましたね。

凝灰岩は固いけど加工しやすい、これが文化とのつながりの上で大切なポイントです。

 

二上山博物館、すばらしい完成度です。

大阪や奈良の皆さん、二上山、どんづる峯とセットで、ぜひぜひ訪れてみてください。

奈良には立派なジオサイトがあると子どもたちにも教えてあげてください。

平成31年2月

弁護士 永野 海

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