宮城県名取市閖上地区の仙台高裁和解と早期避難の重要性
(毎日新聞記事)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200312-00000090-mai-soci
最後の津波訴訟ともいわれる閖上の津波訴訟。主に、地震後に防災行政無線が故障したことにより市民の津波避難を困難にした点が争われましたが、今般和解により終了しました。
閖上地区では、実に人口の「14%」もの方が津波で命を落としています。
私の津波防災講演でも、閖上地区は、データからみるその避難行動をご紹介するとともに、過去の地震で被害がなかった経験や、一部科学的に根拠のない認識(閖上は牡鹿半島が津波を防いでくれる、津波は貞山運河を超えないなど)が、避難を難しくすることなど、常に言及しています。
閖上には、「震度6強」もの極めて激しい揺れが「3分間」も襲いました。にもかかわらず、第三者検証委員会の報告書(津久井先生も委員です)には、次の記載があります。
①地震の揺れが収まってから速やかに避難行動をとった人は、多くても2割程度であり、家族や近隣の安否確認や情報交換、避難所へ行く準備、家の片づけなどを行っていた人が多かった。
②地震の揺れの大きさがいつもと異なる、という意識が避難のきっかけにはなっているが、揺れが収まって30分以上経過してから避難を始めた人の割合が最も高く、約3割を占めていた。
この記載からわかるように、日頃から、宮城県沖地震やチリ地震などにより、地震や津波の頻度が極めて高い宮城県沿岸部の名取市閖上です。そこに震度6強が3分続く大地震が襲っても、地震後に速やかに避難したは「2割」しかいないのです。
しかも、私が地元の方にお話を聞くと、避難した人でも、津波から命を守るため、と強く意識した人よりも、あまりにも大きな揺れで不安だったので、避難場所でほかの人と一緒にいたかったから逃げた、という人がかなり多かったとのことでした。
津波から命を守れた人も、ある意味、偶然によるところが少なくないのです。
また、避難して命が助かった方でも、30分以上経過してからはじめて避難した人が「3割」も占めています。
地震後30分もしてから避難しても助かった人がいるのは、これが東日本大震災だったから、つまり、日本列島から遠い日本海溝で起こったために津波到達時間が極めて遅い地震だったからに過ぎません。
静岡の人が同じ避難行動をすれば、避難する前に津波に襲われてしまいます。
なかなか検証報告書を全て読むのは難しいと思いますが、今月、「名取市震災復興伝承館」がオープンする予定になっています。
この施設の中で、検証委員会の報告書を市民が閲読できるようにするのも、今回の仙台高裁和解の内容に盛り込まれています。
https://www.city.natori.miyagi.jp/news/node_66253…
閖上は、新幹線がとまる仙台駅からも近くアクセスが比較的容易ですから、施設オープン後はぜひ施設を訪れ、地元の方から学んでいただければと思います。