山はどうしてできるのか―ダイナミックな地球科学入門

藤岡換太郎/ブルーバックス

これも非常に面白い本です。アマゾンの評価がそれを雄弁に物語っていますが、この本も、結局はプレートテクトニクスの入門書といってよいと思います。

プレートテクトニクスが世を席巻するまでは、「山がどうしてできるか」については現在とはかなり異なった説明がなされていました。

しかし、この地球の表面が10数枚のプレートから構成され、それぞれのプレートが日々誕生し、マントルの対流により移動し、最終的にマントル深くに沈み込み、さらにマントルや地球の核の対流を促進させ、これにより地球に磁場のバリアが生まれ、太陽風や宇宙線などから地球を守っている、こうしたプレートテクトニクスが明らかになったことで、「山がどうしてできるか」の説明も大きく変化しました。

それまでは、それぞれの山が生まれた原因について都度都度の説明になっていたものが、ほとんど1つの理論から美しく、シンプルに、統一的に説明できるようになったのです。

そのため、この本は、プレートテクトニクスを楽しく学ぶとともに、日常の生活のなかにある地球の凹凸の理由を美しく説明してくれる様(さま)に感動する本でもあります。

この本は、「山」というものに着目していることもあって、プレートテクトニクスの解説のなかで、たとえばプレートが日々生成される中央海嶺についても「標高」的な概念からわかりやすく説明されており面白いです。

人は、海は沖に行けばいくほど深くなっているものだという先入観を持つものですが、大西洋にせよ太平洋にせよその遥か沖合には、海嶺という地球の裂け目ともいうべき、マントルからマグマが吹き出し、玄武岩質の地殻を作っている場所があります。プレートの誕生の場所です。

そこでは、火山のように山頂の火口からどんどんとマグマが冷えながら海嶺を降りてゆきながら海底へと移動していきます。そのため、陸上からみれば、沖にいけばいくほど中央海嶺に近づくにつれ海が浅くなっていくという意外な「事実」もあります。面白いですよね。

武田信玄は、動かざるごと山の如しという言葉を引用しましたが、地学の見方でいえば、まさに、「動くこと山のごとし」で、山があることは、それだけの地殻変動が生じたことを意味する証拠であるわけです。

地学が探求を開始する理由の1つも、「そこに山があるからだ」ということになります。

山ができる理由としては、

①断層運動によるもの

②造山運動 (付加体の形成や大陸の衝突 )によるもの 、

③火山活動によるもの

④風化や浸食によるもの

などがありますが、そのほとんどは、プレートテクトニクスから説明することが可能です。

ヒマラヤ山脈ができたのは、ユーラシアプレートに、北上したインドプレートが衝突したからですし(現在も衝突し続けています)、ヨーロッパのアルプス山脈ができたのも、同じくユーラシアプレートにアフリカ大陸が衝突したからです。

日本のアルプス山脈もユーラシアプレートと北米プレートが衝突した結果ですし、南アルプスは、フィリピン海プレートの衝突が原因になっています。

また、火山活動により山ができることもありますが、火山活動も、プレートの潜り込みによる火山フロントの誕生にせよ、ホットスポットによる噴火にせよ、やはりプレートテクトニクスから説明できるものです。

現在、ハワイ島のキラウエア火山が観光スポットとして有名ですが、なぜハワイ島の北西方向に一列に島々が並んでいるのか、ホットスポットと太平洋プレートの動きとの関係で知ると、地図をみながら大きな感動を得ることでしょう。

多くの人が、これまでの人生の中で、ハワイは毎年日本に近づいている、というような話を聞いたことがあると思いますが、これもプレートテクトニクスにより引き起こされる事実ですし、もっと大きな話でいえば、大昔から地球は、プレートの動きに伴い、合体と分裂を繰り返していますので、遠い将来には、全ての大陸は東アジアを中心にしてまた1つにくっつくことがわかっています。

北朝鮮のミサイルがアメリカ本土に届くのか、ということが世界の関心事になっていますが、そんな心配をしなくても、遠い先には、北朝鮮も北米大陸もくっつくのです。ミサイルなんて飛ばさなくても、手で投げても届くようになるかも知れません。

オーストラリアだって、わざわざ観光にいくまでもなく、将来は、日本列島にくっつきますから、自動車や電車でいけるようになります。

冗談はともかく(冗談ではなく科学的真実ですが^^)、山、というのは、わたし達にとって極めて身近な存在です。

家からみえるあの山、旅行にいった先にあるあの山が、どうしてできるのか、こうした著作を読んで想像できるようになると、自然の景色が2倍も3倍も面白い対象となって迫ってくると思います。

山はきれいだなあ、で終わる観光や余暇も素敵ですが、この山はどうしてここにあるのかをのんびりと考える観光や余暇も面白いものです。

ぜひ本書を片手に持ち(あるいは電子書籍としてダウンロードし)ながら、日本の、世界の山々を眺めてもらえればと思います。

 

平成29年12月 読了

静岡市清水区 弁護士永野海