今回から何回かにわけて洞爺湖・有珠山のジオサイト,災害遺構についてご紹介します。

 

(早朝 西側からみた洞爺湖と中島)

日本の国定公園の大半は火山と関係があります。

ここは支笏洞爺国立公園。

それだけ火山は素晴らしい景観と恵みをもたらすということです。

 

 

(4つの溶岩ドームと火砕丘からなる島でできた中島)

特に火山地帯や火山に関係してできた地形を観光する際には,

「現在の地形・景観に至った過程」

を知ることが,見るもの感動を2倍,4倍に大きくしてくれます。

そのことをぜひ知っていただきたいです。

それが地球を知ること,地球を感じることにつながり,ひいては命を守る防災にもつながるものと考えています。

 

 

さて,洞爺湖です。

丸いですよね。

こういう形の湖は,だいたいカルデラ湖だと思ってもそれほど外れはないと思います。

カルデラというのは,大規模なカルデラ噴火を起こしたあと,マグマがなくなって地下に大きな空洞ができたためそこが陥没してできた地形です。

噴火してできる火口は基本そういう原理でできているわけですが,その大きさが2kmを超える場合にカルデラと呼んで区別しています。

 

 

(左に中島 右に有珠山)

そのカルデラに水がたまったのがカルデラ湖。

洞爺湖はこうしてできた火山によるカルデラ湖なんです。

できたのは11万年前。

 

 

洞爺湖の成り立ちを,洞爺湖ビジターセンターのパネルをお借りしてみてみましょう。

 

 

11万年前に発生した洞爺湖付近の火山活動では巨大な火砕流が発生しました。

火山灰は東北まで達するほどでした。

 

噴出した火砕流は周辺に積み重なり「台地」地形に変えるとともにカルデラ湖を作りました。

 

その後,5万年前には,カルデラができた後さらにカルデラ内に噴火がはじまり,先ほど写真でみた中島が生まれました。

溶岩ドームです。

 

2万年前には,今度はカルデラ湖の南側で噴火がはじまりこれが有珠山になりました。

最初は富士山のようなきれいな成層火山の形でした。

 

8000年前になると,火山活動で有珠山の南西側が山体崩壊を起こしました。

雲仙岳における眉山の山体崩壊(江戸時代の島原大変肥後迷惑です)と同じですね。

 

その後数千年活動を休止していましたが,江戸時代に有珠山が活動を再開しました。

そういう時代を我々はいきているわけです。

 

 

(時を忘れて見入ってしまう有珠山の詳細な地質図)

現在の景観が,どういう経過が作られたものなのかを考えると

「地球のダイナミズム」

を感じられるとともに

景色に時間の流れが加わった極めて立体的な感覚で体感することが可能になります。

防災上も,

「いまの姿」

だけをみていると大きな視点が抜け落ちてしまうことがあります。

 

 

(洞爺湖西岸からの有珠山)

有珠山の形状は長崎の雲仙岳にとてもよく似ています。

いずれもシリカ(二酸化ケイ素)の濃度が近いデイサイト質のマグマをだす火山です。

火山活動の度に別の場所から噴火し,山体を隆起させたり溶岩ドームを作ったりするので,こうした火山の形になるのです。

 

 

あまりに有名な昭和新山です。

標高398mのデイサイト質の溶岩ドームの山です。

デイサイトで粘り気が強いので形をたもったまま隆起していきます。

 

 

(ロープウェイ途中からの昭和新山)

第二次大戦中の1943年の年末からの火山活動に伴い,それまで麦畑だった土地が突如隆起をはじめ,600日ほどかけてこの姿になりました。

雲仙普賢岳にできて多数の死傷者をだした溶岩ドームと同じです。

有珠山の火山活動は,

「噴火や溶岩ドームの形成は山頂や山麓から生じるもの」

との先入観を一掃してくれます。

その後の火山活動でも,様々な場所がある日当然噴火口に変わる姿をみせているのが有珠山です。

 

 

(ロープウェイ山頂からの昭和新山)

現在でも表面温度は100℃ほどあるようです。

マグマが冷えるのには長い長い時間がかかります。

地球だって誕生以来徐々に冷えていますがいまでも中心付近はいまでも6000℃ぐらいありますもんね。

 

 

では,実際に有珠山を歩いてみましょう。

ロープウェイを下りて有珠外輪山展望台までの往復で1時間半から2時間ほどです。

大有珠,オガリ山,有珠新山,北屏風山,小有珠と,

火山活動に伴って作られた複数の山を間近にみることができます。

 

 

大有珠の山頂の様子です。

マグマの跡がそのまま残るような山肌ですね。

 

 

無数のふきのとうが見られました。

 

 

さて,遊歩道のスタートです。

奥に見える山の稜線が外輪山です。

そこを歩きます。

 

 

まずは一度外輪山の中に下りていきます。

階段は600段ほどあるようです。

火口周囲の外輪山の中の火口の大きさをみると,カルデラと呼んでもよさそうですね。

実際,火口の直径は2kmほどあるようです。

 

あの外輪山の稜線をひたすら歩くと思うとかなり遠く感じますが,実際歩いてみるとそれほどでもありません。

 

 

一度火口の中に下りて,また外輪山の稜線に登ります。

 

 

これが外輪山の稜線。

非常に安全でアップダウンもほとんどありません。

 

 

大有珠からかなり歩いてきたことがわかります。

 

 

大きな火口は,銀沼大火口。

奥の中央の凸がオガリ山,その右側が大有珠。

 

 

写真奥中央やや左が,有珠新山。

複数の噴気がいまでも見られます。

 

 

有珠外輪山展望台からパノラマ画像で。

左手前の山は小有珠。

火山活動の場所が次々に変化していることがよくわかると思います。

 

 

ロープウェイに戻ります。

写真中央に一直線の遊歩道がみえます。

なかなか大変そうです。

 

 

最後に上りの遊歩道手前からパノラマ写真。

 

洞爺湖,昭和新山,有珠山ロープウェイというのは,洞爺湖観光の定番ルートかと思います。

そこで,現在の景観だけみるのではなく,

「この11万年の間にどのような火山活動があり,現在の姿になったのか」

その時間軸も含めてみてもらえると,有珠山の活動の姿がよくわかると思います。

 

洞爺湖ビジターセンターには火山科学館も併設されていて,3つのスクリーンと振動を感じる座席で有珠山の噴火の歴史と災害対応についてしっかりと学ぶことができます。

 

では,次回は,有珠山の災害痕跡,災害遺構編を。

 

平成30年5月

静岡市清水区 弁護士 永野 海