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かつての琉球を伝える轟の滝(沖縄県名護市)

巨大な一枚岩が圧倒的な存在感を放つ、名護市の轟(とどろき)の滝。

滝の高さ自体は28mほどで、上流の轟川が水源です。

 

この一枚岩の正体は、石英斑岩(せきえいはんがん)。

地下のマグマが地表近くまで貫入(かんにゅう)してきたあとに、地表にでる前に地中で冷えて固まってできた石です。

組成としては流紋岩に似てますが、地表にでる前に固まっているので半深成岩とも呼ばれます。

 

この石英斑岩が、地下のマグマ活動の痕跡というのがポイントです。

私が知る限り、沖縄本島は、北部はジュラ紀や白亜紀の付加体、南部は新しい琉球石灰岩の地質で、ほとんど火成岩(マグマからできた岩石)は見られないと思います。

この轟の滝でみられる火成岩たる石英斑岩は、極めて珍しい痕跡です。

 

この石英斑岩が作られたのは1500万年~1200万年ほど前のことのようです。

沖縄の北部は、主として、本州と同じように、アジア大陸から切り離された付加体から作られています。

日本海の拡大という大事件によって(その原因について定説はいまだにないと思います)、2000万年前から1500万年前にかけて日本列島がアジアから切り離されたのと同じように、南西諸島も大陸から切り離されています。

琉球弧は本州部分とは別の弧を描いていますが、研究によれば、この琉球弧は、既に1500万年前に拡大が終わった日本海(本州部分)と異なり、いままさに背弧海盆たる沖縄トラフの拡大期で、いまも、毎日毎日、少しずつ南側に広がっているようです。

沖縄トラフではその証拠として、海底に熱水の噴出もみられるそうです。

これは、プレートを日々誕生させ、拡大させている中央海嶺と似た現象です。

 

日本海が、バリバリバリバリと割れながら拡大していた時期に、無数の正断層が生まれ、その隙間から大量のマグマが噴出していたように、1200万年前頃、この南西諸島の形成期にも、一部で、地下のマグマ活動が活発になっていたのでしょうか。

そんなことを想像させる、壮麗な石英斑岩の一枚岩です。

 

現在は公園としてきれいに整備され、有料ながら(大人200円)、訪れやすくなっています。

ぜひ沖縄本島では貴重な火成岩をみて、南西諸島形成の過程を想像してみてください。

2019年8月

弁護士 永野 海

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