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宍喰浦の漣痕(徳島県海陽町)

地学における漣痕(れんこん)とは、もちろんあの美味しい蓮根ではありません。

一般には、リップルマークとも呼ばれますが、地層の表面を水や空気が流れることでできた模様のことをいいます。

川底や海底など様々な場所で生まれますが、その波型の形状が現代まで残されることはなかなかありません。

ここ、徳島県の海陽町に残されたリップルマークは、日本でも珍しい明瞭な痕跡です。

・・・ですが、現在ではどうでしょうか、かなり波の形状がわかりにくいですね・・・。

かろうじてわかりますが、具体的にレクチャーを受けないと厳しいレベルになってしまっていますね。

案内看板の侵食もそれなりに激しく(笑)、なかなかジオに予算を投じることが難しい実態が伺えます。

この写真からわかるように、ここの地層は、下から1枚1枚地層が重ねられていって、一番手前が、重なり合った地層の一番上です。

その一番上の地層に波の痕跡が残っているわけですね。

さて、この場所では、やや不明瞭になってしまっている漣痕(リップルマーク)よりも、単純に、4000万年ほど前に海底で作られたタービダイト(砂岩と泥岩の互層の地層)の美しさが目を引きます。

少しご覧いただきましょう。

このタービダイトという地層は、相対的に太い地層と細い地層が交互に堆積しているのですが、太い地層が砂岩、細い地層が泥岩です。

砂岩より泥岩のほうが侵食に弱いので削られ、太めの砂岩→奥まで削られた泥岩→太めの砂岩→奥まで削られた泥岩という地層が順番に並んでいます。

機序としては、1つの太い砂岩層と1つの細い泥岩層がワンセットで作られます。

大陸の河川で河口に運ばれた砂や泥は、大陸棚、大陸斜面と徐々に進み、最終的には海溝付近に堆積します。

海溝付近の傾斜地などで、地震や大洪水など様々な原因で海底地すべりが起こったときに、砂と泥が海底に崩落します。

その際、より重い砂が先に沈み下にたまり、他方で、より細かくて軽い泥が上にたまります。

ペットボトルに水を入れて、そのなかに砂と泥を入れて、ワシャワシャとペットボトルを振ったあとに放置すると、この現象を確認できると思います。

この砂の層と泥の層が1つのセットになって海底に堆積します。

その後、まだ時間が経過し(たとえば1000年)、次の海底地すべりが生じると、前の砂と泥のワンセットの地層の上に、再び、新しい砂と泥のワンセットの地層が堆積します。

これが延々と繰り返されて、写真のような美しい地層ができあがるわけです。

この写真はその堆積した地層の断面を横からみていることになります。

(もちろんもともとはほぼ水平に堆積したのだと思われますが、その後固結して岩石の地層になり、付加体として大陸にくっつく際などにプレートに押されてこのように地層が90度傾いたりするわけです)

ともあれ、こうしたタービダイトの地層をみる際には、1つの太い地層ごとに何らかのイベント(地震や大洪水)が生じて、地すべりを生じ、海底に堆積し、また次のイベントで次の太い地層が堆積し、という気の遠くなるような時間の流れと地球の事象をぜひ感じてもらえればと思います。

令和2年1月

弁護士 永野 海

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