富士山溶岩の北端 猿橋 ぶらり防災の旅
今回の旅は,山梨県大月市の猿橋。
富士山の溶岩流の最北端を訪ねてみましょう。
途中,吉田うどんの名店,くれちうどんさんで腹ごしらえ。
特にコシが激烈に残る冷やしうどんがお勧めです。
信じられないようなコシで,もはやうどんというより,二郎系ラーメンに近いですね。
車は大月市郷土資料館(猿橋公園)の前に停められます。
郷土資料館では灰長石(かいちょうせき)の展示もありました。
さて,きれいな猿橋公園をとおって富士山の猿橋溶岩流を観察しにいきましょう。
公園からはわずか5分ほどです。
公園を突っ切った先,猿橋に向かう遊歩道の右側で溶岩が観察できるようになっています。
猿払公園は藤の花がきれいでした。
美しい藤棚。
散策路の右側。
少しわかりにくいですが崖の中ほどに富士山溶岩(玄武岩)の柱状節理がみえますね。
柱状節理(ちゅうじょうせつり)は,溶岩が冷えて固まる際に収縮してできる形状です。
自然界の安定形状である六角柱になることが多いです。
溶岩は写真右から左に流れてきました。
看板には6000年前とありますが,最近の研究では約8500〜9000年前の富士山噴火によるものという記載が目立ちます。
しかし,ここからは姿さえ見えない富士山から,富士吉田を通ってこんな遠くまで流れてくるとはすごいですね。
散策路はとても気持ちの良い場所です。
30kmも溶岩が流れてこれたのは、一つにはこの時期の富士山の溶岩はかなりさらさらした粘り気の低い玄武岩質のパホイホイ溶岩だったこと。
もう一つは、流れた溶岩の上部が冷えて固まって、その中の溶岩トンネルを溶岩が流れてきたからだと考えられています。
さて、散策路を抜けるとすぐに桂川がみえてきます。
川の流れは写真左から右です。
左岸(写真上)にみえている白い壁は緑色凝灰岩(グリーンタフ)です(後述します)。
河原には富士山の玄武岩溶岩がいくつも落ちています。
無数に空いている穴は,溶岩が冷えて固まる際に内部のガスが抜けてできたものです。
桂川右岸の岩石(猿橋の上流側)。
これは富士山の玄武岩溶岩ではなさそうですね。
左岸の白緑の凝灰岩とも少し違うようにみえますが,表面が風化しているだけでやはり同じ凝灰岩でしょうか。
手前の灰色の岩石は富士山の玄武岩溶岩です。
中ほどの岩石が前述のように若干不明で,奥は緑色凝灰岩(グリーンタフ)です。
ここも緑色凝灰岩?
これは緑色凝灰岩(グリーンタフ)。
いまの日本列島のはるか沖の海底火山の噴火によって噴出した火山灰が堆積した凝灰岩です。
丹沢などと同じ流れでできた地層だと思います。
はるか沖でできた凝灰岩の層がフィリピン海プレートに乗って日本列島までやってきて,本州にぶつかった結果ここにあるものと考えられます。
1000万年前ぐらいのできごとです。
丹沢山地の日本列島への衝突と同様の流れだと思います。
桂川左岸のグリーンタフをパノラマ写真でどうぞ。
富士山の猿橋溶岩流の北端を観察だけるだけでもすごいのに,緑色凝灰岩まで観察できる猿橋のジオサイトとしてのすごさ。
この猿橋手前で急激に侵食により狭くなり渓谷になっています。
これは猿橋の上から下流側を撮影したもの。
手前の橋は水道橋で水が流れています。
これは猿橋から上流側をみたもの。
白い緑色凝灰岩が美しいですね。
これが名勝,猿橋。
ここが一番渓谷のなかで狭くなっているため,ここだけは橋をかけられたのでしょう。
ただし,あまりにも渓谷が深いので,30m下の川底に橋脚を打つことができず,両岸から4層のはね木によって橋を支えています。
こんな風に。
日本三大奇橋の1つ。
切り立った凝灰岩の崖。
この日はとても穏やかな流れでした。
渓流下りのボートが,渓谷のスケールをよく伝えてくれます。
甌穴(ポットホール)がありますね。
川の水流によってこのくぼみのなかの岩石がコロコロ転がってきれいな丸い穴をあけたものです。
以前はここまで川の水位があったことがわかります。
猿橋から猿橋公園に戻る散策路では,左側にまた富士山溶岩の柱状節理がみえてきます。
柱状節理の高さは2mほどでしょうか。
以前の桂川はこの高さまで水位があったのでしょう。
ここにも柱状節理。
富士山から30kmも旅をしてきてここまでたどり着いた尊い溶岩です。
噴火の規模の大きさも推し量れますね。
このあたりが溶岩流がとまった最先端部でしょうか。
木の根と同化してます。
(藤の花と柱状節理)
富士山の溶岩は,二酸化ケイ素の含有率の低いさらさらとした玄武岩質溶岩です。
だからこそ30kmもの道のりを流れてくることができたのかもしれません。
散策路では美しい草花も目にすることができます。
特に首都圏の皆さんなど,中央道の大渋滞に巻き込まれたときには,大月で降りて一休みし,この猿橋で,はるか洋上の海底火山の痕跡と,富士山から流れてきた溶岩という2つの地球のものすごいダイナミズムを感じてみるのもよいと思います。
平成30年4月
静岡市清水区 弁護士 永野 海