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小瀬崎火山の痕跡(沼津市)

ダイビングスポットとして有名な静岡県沼津市の小瀬崎。

沿岸流が西から砂礫を運んだことによって形成された砂嘴(さし)です。

 

小瀬崎の砂嘴の西側には、このようにかなりの大きさの(亜)円礫が堆積しています。

私見ですが、礫が大きいのは、石ころの産出場所からここまでの距離が短いために(上流から河口までの距離が近い)、小さく破砕されていないこと。

そして、小瀬崎の西側を流れる強い沿岸流によりこうした大きな礫でも運ばれること。

この2つによって大きな円礫が海岸に集まっているのだと思われました。

 

小瀬崎は静岡県内でも有名な観光地ですが、この場所に火山があった、また火山により作られた地形(砂嘴となる前の地形)であることを知っている人はわずかです。

この神池は、細長い砂嘴の先端部にあるにもかかわらず、海水が混入していない完全な淡水です。

この池(近くの山から流れてきた湧水が源です)に海水が混入していない理由も、小瀬崎火山から流れ出た溶岩の層が海水を通さない機能を果たしているからだと考えられています。

 

小瀬崎の砂嘴の西側の海岸沿いを南に向かって歩くと、こうしたミルフィーユの地層がみえてきます。

 

灰色の部分は溶岩が冷えてかたまった部分。

灰色と灰色の間にある赤茶けた部分は、伊豆半島ジオパークでは、クリンカー(溶岩の表面のガサガサの部分)と説明されていましたが、直接みた素人の感想としては、むしろスパター(溶岩のしぶきが降り積もったもの)にみえました。

当時、小瀬崎火山が、どろりとした溶岩を流すと同時に、噴水のように溶岩のしぶきを多数周辺に飛び散らせ、こうした交互の地層になっているように感じたものです。

あくまで素人の戯言ですが。

 

小瀬崎火山の溶岩の痕跡と、背後に富士山。

海上の白波が、この日、立っていることも難しいほどの強風(暴風)であったことを伝えてくれます。

 

そしてここが小瀬崎火山の火口直下の断面です。

右側の白い部分は、マグマの通り道(火道)にあるマグマがそのままの姿で冷えて固まった部分。

そこから(写真右の火道から左へと)何度も溶岩が流れ、また溶岩のしぶきを噴出させ、幾重もの層を作り出していることがわかります。

写真でみるより実物は巨大で、わたしの身体の大きさと比べてもらえるとスケールがわかるかと思います。

クリンカーかスパターかは別として、溶岩と溶岩の間の地層が赤くなっているのは、噴出した際に酸化したこと、つまりは、陸上で空気と触れながら燃焼していたこと、つまりは、この場所で起きた陸上の噴火であったことを教えてくれます。

 

灰色の部分は溶岩が流れ下った部分です。

安山岩質の溶岩でしょうか。

 

小瀬崎火山の年代は正確にはわかっていませんが、およそ100万年前。

伊豆半島がちょうど本州に衝突した頃です。

伊豆半島の北西部、このあたりは今回ご紹介した小瀬崎火山だけではなく、さらに南の井田火山、そのさらに南の大きな達磨火山と、(伊豆半島に多く見られる海底火山の地層とは異なる)、100万年前から数十万年前までの間に、まさにこの場所で噴火した火山により作られた地層です。

小瀬崎から戸田のあたりまで半島の西側の海岸線を船からみれば、これらの火山の明瞭な痕跡をみることができます。

令和元年12月

弁護士 永野 海

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