富士山の大沢崩れ(富士宮市)
富士山の西側、朝霧高原の方向からは、富士山の崩落地形がみられます。
大沢崩れと呼ばれます。
日々崩落し続ける地形で、毎年、10tダンプ3万台分もの土砂がこの場所から崩落しています。
大沢崩れ周辺の地層は、富士山の噴火の歴史に応じて、硬い溶岩層とそこまで硬くないスコリアの層が交互に堆積しています。
噴火がない時代の風化と侵食により、まず柔らかい層が崩れ、次に硬い溶岩層も崩れと、という順番で崩落を繰り返しているのです。
この大沢崩れ、小山真人先生(静岡大)によれば、この場所では、これまで何度か、①崩落と②その後噴火による沢筋への溶岩地層の充填 、という営みが繰り返されてきたようです。
現在の大沢崩れの崩落は、最後の噴火で沢が溶岩で満たされたあとに、再度崩れている新しい崩落痕跡ということになります。
現在の大沢崩れの崩落土量は、東京ドーム60杯分にも達します(そのために土石流被害が山麓に生じないよう本格的な砂防工事がなされています)。
しかし、将来の噴火でまたこの沢は溶岩やスコリアで埋められるのでしょう。
もちろんその前に、大噴火で山体が崩壊し、この富士山の地形自体が変わってしまっているかもしれません。
現在の富士山の姿は、全体の山容も、この大沢崩れも、10万年の最近の富士山の噴火史からすれば、たまたま一瞬この姿をとどめているに過ぎない刹那的なものに過ぎません。
2019年8月
弁護士 永野 海