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息子と行く大川小学校跡地 (被災地再訪・前編)

大川小学校跡地では,毎月,この場所で大切な大切なお子さんを失われたご遺族によって,語り部の会が開催されています。

大川伝承の会さんのプログラムです。

私がご遺族と同じ立場にあり,かつ一歩を踏み出すことができれば,間違いなく同じ行動をしています。

わが子の命を絶対に無駄にしないために。

ただし,私自身なら,一歩を踏み出すことができるか自信はありません。

言葉でいうのは簡単ですが,こんなにも悲しい出来事のあとで「一歩を踏み出す」ということは普通できることではありません。たとえ理屈では様々なことがわかっていたとしても。

ご遺族の皆さんがこうした活動を始められ,また続けられていることに敬意と感謝しかありません。

 

昨年,語り部の会に参加させていただきました。

その時に一部撮影させていただいた動画は,大川伝承の会さんのご了解をいただき,静岡での津波防災の講演でも流させていただきました。

そのときの講演は通常の記事だけでなく,当日参加してくださった武田記者が後日静岡新聞のコラムにも掲載してくれました。

ご遺族の語る言葉がどれだけあの日静岡にいた人間の心を打ったか,ということです。

 

防災を知る,学ぶ,語る,ということは意識を持った人にはできることですが,身体全体で「自分のこと」として心底とらえることはそんなに簡単なことではありません。

いくら新聞記事や報道番組や書籍から学んだとしても。

 

命を守る防災を自分のこととして考えるためには,私のような普通の人間は,現地にいくしかありません。

そこでしかどうしても感じることができないものがあるからです。

そして,現地の場所を自分たちだけで訪問すると大抵訪問者の自己満足的な見方と充足に終始してしまいます。

これではかえって有害でさえある場合もあります。

各地には語り部さんのプログラムが用意されています。

ぜひ現地の方に教えてもらいましょう。

 

防災講演をする際,可能なときは,息子を連れていくようにしています。

息子の協力を得て,津波避難訓練の様子を撮影し,それを会場で流したこともありました。

(御前崎災害支援ネットワークの落合さんはその訓練の様子をみて,御前崎市に津波避難看板の設置を働き掛けてくれました)

 

はじめて大川伝承の会さんのプログラムに参加したとき,絶対に,息子をここに連れていかないといけないと思いました。

小学生に何が伝わるのかそれは正直わかりませんが,何かを感じ,そして

災害から生き残る力を学んでもらいたい。

あわよくば,この体験を将来,それは本当に遠い将来かもしれませんが,誰かに伝えてもらいたいと思いました。

今回ようやく実現し,この実現にかかわる全ての人に感謝しています。

 

冒頭の黙祷。

息子が参加者の皆様を代表して鐘をつかせていただきました。

*写真は会津泉さんの撮影動画からお借りしましたm(__)m

 

ここに避難すれば命を救えた大川小の裏山。

息子を含む小学生らが代表して上っていきます。

子どもたちは駆け足で降りてきました。

駆け足でおりてくることが可能な逃げ場があったということなんです。

 

避難可能だったはずのコンクリートの場所。

ここに何百人が避難できたか。

さきほど駆け下りてきた場所です。

 

その場所からみえる大川小学校。

 

最後,共同通信の記者さんから取材を受けていました。

県外の小学生が将来の命を守るために大川小学校まできて学んでいることをぜひ全国に発信してもらいたいと思います。

防災の旅としてこの場所を取り上げることはまだできそうにありませんので,取り急ぎ,子どもとの訪問記として。

ただ,1点だけ。

今も大川小跡地を全国から訪れる教師が絶えません。

「自分ならどう生徒を守れるか自問しにきて下さる。これが本来の先生の姿」と大川小で我が子を失った只野さんは語ります。

事前に事案を生徒と学んだ上で,大川小跡地で生徒がどう逃げるかの訓練を実施する小学校もあります。

仙台高裁の判決文もネットで入手可能。今や学校の津波防災の最もすぐれたテキストです。

月に1度,このように大川小跡地で遺族が語り部をしています。

学校関係者の皆さん,先入観を排しぜひ一度訪問してみて下さい。

保護者も同じです。

我が子の命を守りたいならまず東北で何が起きたかを学んで下さい。

そして我が子が通う学校の防災マニュアルと訓練の内容を自分の目で確かめて下さい。

学校と地域や保護者の連携が子供らの命のバトンを繋ぎます。

 

平成30年5月訪問

静岡市清水区 弁護士 永野 海

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