室戸岬周辺のジオサイト ぶらり防災の旅
既に室戸ユネスコ世界ジオパークは2箇所ご紹介していますので、室戸に関する基本的な話は省略し、今回は、南端の(狭義の)室戸岬周辺のジオサイトをざっとご紹介します。
場所はこのあたり。
まずビシャゴ岩周辺から。
弘法大師行水の池。
・・・という伝承的なところはおいておいて・・・
写真の中ほど、見事に波の形に侵食されていますね。
ここが当時波打ち際であったことがわかります。
つまり繰り返す地震などによりこの場所が相当隆起していることがわかります。
これもある種の災害痕跡ですね(ただし人間誕生のずっと前の話です)。
有名なビシャゴ岩です。
マグマが地中で冷えて固まった斑レイ岩です。
マグマが地中で冷えて固まった岩石は深成岩といって二酸化ケイ素の含有率にしたがって
少ない 斑レイ岩<閃緑岩<花崗岩 多い
含有率が多くなるほど白い石英(二酸化ケイ素の結晶)のウェートが上がるので白っぽい岩石になります。
室戸岬の先端から東側は斑レイ岩が占めています。
このビシャゴ岩もそう。
地中から陸源性の堆積岩のなかに貫入してきたマグマが冷えて固まって斑レイ岩となり隆起してます。
周囲の侵食に弱い岩石はなくなって硬い斑レイ岩の部分だけが残っているんでしょうか。
別角度からのビシャゴ岩。
周囲にあるのは基本すべて斑レイ岩です。
同じ深成岩でもやはり花崗岩なんかと比べると黒っぽいですよね。
すぐ近くには、弘法大使空海が修行した御厨人窟が。
空海の漫画や小説だと、だいたいここでの修業して最後に金星が口のなかに入るシーンから入ったりします。
この洞窟からみえる景色が空と海だけだったから、空海と名付けたという話もあります。
うちの家は、亡くなった祖母も私の父も高野山に眠っており、昔から何度も高野山にお参りしていますので、この場所はとても感慨深い場所でもあります。
地学、防災的には、先程のエピソード。お大師さんが修行したころは空と海がみえたということですが、いまこの洞窟からは海はみえません。
それだけ地震などによって土地が隆起していることをここでも理解することができます。
順番が前後しましたが、前述のように、室戸岬では、斑レイ岩の地層と、砂岩泥岩の互層の地層が南端を境にきれいにわかれています。
室戸岬南端の海岸にでてみましょう。
砂岩泥岩の互層(タービダイト)が観察できます。
タービダイトについてはこれまで何度か説明していますが、地震などを含めた様々な原因により海底地すべりが起こったときに、砂の層と泥の層が滑り落ちます。
ペットボトルなどでも簡単に実験できるように、その場合、粒子の大きな砂の層が下にたまり、細かな砂の層はその上にたまります。
これで砂と泥のセットの層が1つできます。
さらにその後時間が立って次の地すべりが起こると、その上に、さらにまた砂の層と泥の層が堆積します。
それが気の遠くなるような時間を経て固まった砂岩と泥岩の互層ができていきます。
繰り返しになりますが、砂岩と泥岩のワンセットが一回の地すべりの存在を意味します。
それが何度も何度も起きて写真のような何重もの互層になっているのです。
写真でみているのはほとんどが砂岩です。
砂岩と砂岩にはさまれた泥岩の層は侵食に弱いので削られていきます(砂岩と砂岩の間に少し隙間がみえるのがそうです)。
大陸の河川の河口から運ばれた砂や泥が最終的に深い海の底にたまりこのタービダイトができます。
その後、海洋プレートに乗って移動してきてまた陸地に戻ってきて日本列島に付加体として付加されまた陸に戻るという壮大な循環です。
陸地にぐいっと押し付けられこうした地層の上下になっているのでしょうか。
褶曲しています。
押し付けられたときの圧力による褶曲でしょうか。
海底地すべりの段階での褶曲かもしれないですね。
層の厚さに変化があるのも面白いですね。
室戸岬の南端部のタービダイト層からは室戸岬の灯台もきれいにみえました。
平成30年2月
静岡市清水区 弁護士 永野 海