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三重県の中央構造線(松阪市・多気町)

出典:https://www.gsj.jp/hazards/earthquake/kumamoto2016/kumamoto20160513-2.html

このように中央構造線は三重県を貫いています。

航空写真でみても、黄色い線が中央構造線ですが、あえて黄色の線を入れてない部分も、なんとなく中央構造線の場所はライン(リニアメント)でもわかりますよね。

これは、中央構造線が走っている場所は、断層が何度も動き、岩石が破砕され、脆くなり、河川などの浸食を受けやすくなるため、直線的な谷地形が生まれるからです。

こちら、多気町の採石場にみられる露頭。

地質の境界は明瞭にみえます。

境界右側が外帯の結晶片岩の破砕帯(断層ガウジかカタクレーサイト)、左側が内帯の岩石にもみえますが、解説がないので残念ながらよくわかりません。

拡大写真を掲載しておきます。

さきほどの露頭の近くにはこんな工事中の露頭も。

これも外帯の灰色の地質と内帯の花崗岩類の淡褐色の地質にもみえますね。

こちらは櫛田川。

三波川帯(外帯)の結晶片岩が河床に露出しています。

秩父長瀞にそっくりですね。

次に、有名な三重県松阪市月出にある中央構造線の露頭を訪ねましょう。

山道を車で上っていきます。

中央構造線沿いの谷筋がきれいにみえていました。

露頭の下からも上からもアクセスできます。今回は上から。

500mほど坂を下りて行きます(帰りは少し大変です)。

遠くに写真でみたことのある露頭の姿が遠望できました。

到着です。

この中央構造線の露頭は、高さ約80m、幅約50mあります。平成7年度からの治山事業の中で出現したそうです。断層面は東西に走っていて(衛星写真でもわかりますね)、北に60度ほど傾斜しています。

露頭の少し上部から。

三重県より西の中央構造線(和歌山とか四国)では、この写真でいう左側の内帯の領家花崗岩の地層の上に新しい和泉層群の地層が乗り上げてしまっているために、領家帯(内帯)と三波川帯(外帯)がともに並ぶ姿を観察できるこの三重県の露頭は、とても貴重なのです。

書籍などでみるものと比べれば、残念ながら相当不明瞭になってしまっています。

少しわかりにくいですが、地質の境界(中央構造線)はこんな感じで走っていますね。

できた時代も数千万年違い、できた場所も全く違う(内帯の岩石は火山の直下でマグマだまりが冷え固まったもの、外帯の岩石はプレートの沈み込み帯の高圧の中で変成したもの)2つの地質が、海のプレートに押され押されて、何度も何度も何度も何度も地面がずれ動くなかで(直下型地震です)、ある日、こんにちは、と隣り合わせになり出会いました。

これが中央構造線です。

お互い出会った瞬間びっくりしたことと思います。

さきほどの中央構造線のラインを下に追っていくと境界らしきものが。

境界付近は断層粘土のようになっているようにも見えました。

定期的に露頭のクリーニングはされているんでしょうか。

また昔のような明瞭な露頭に戻るとよいと思いました。ジオサイトは、屋外の自然そのものなので、地元の人の協力やジオパークなどによる定期的なメンテナンスが実はとっても大切です。

次の露頭に向かう途中の櫛田川です。本当に秩父長瀞の岩畳(いわだたみ)にそっくりです。これは黒色片岩でしょうか。

さて、三重県の中央構造線、最後の露頭観察です。

なかなか大変な山道でした。

これは2012年に新たに発見された中央構造線の露頭です。

さきほどの有名な月出の露頭から、東へ5kmほどの飯高町粟野、田引、標高800メートルの林道沿いにあります。

大きな車ではなかなか険しい山道の走行が難しく、また土砂崩れなどがあるといけなくなることも想像されます。

この露頭は、南北ではなく、東西の断面で(写真左が西)、中央構造線の露頭としては珍しいようです(東西に走っている断層ですから当然ですね)。

朝日新聞によれば、北に35度の傾斜で沈み込んでいるとのこと。

現地の外帯の結晶片岩は、破砕されぼろぼろです。

下側の灰色部分がおそらく黒色片岩のカタクレーサイト(破砕岩)、上側が領家帯の花崗岩類です。

とにかく断層境界部分の岩石はぼろぼろと崩れやすくなっています。

帰路、この道を下りて行きます。なかなか大変です(苦笑)

前述のように、日本最大の断層である中央構造線の露頭として、内帯の岩石と外帯の岩石がまさに接しているところを観察できる場所は、日本の中でも多くはありません。

三重県、愛知県、長野県などは数少ない観察場所です。

ぜひ一度訪れ、数百キロ離れた場所にあった別々の地質が、数えきれないほどの地震のたびの断層運動によるずれで、ついにはある日出会うことになるこの地球の巨大なエネルギーと長大な時間の物語を感じてもらえればと思います。

令和2年9月訪問 弁護士・防災士 永野 海

このように

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