BLOG

  1. HOME
  2. ブログ
  3. ブログ
  4. 口坂本温泉とプレート運動の痕跡

口坂本温泉とプレート運動の痕跡

今回は,静岡市葵区の北,安倍川の上流にある口坂本(くちさかもと)温泉です。

温泉に入るついでに,(地震を起こす)プレート運動と日本列島の成り立ちを感じてみましょう,という話。

 

口坂本温泉は,市営の温泉です。300円という格安(H30.4時点)で,静岡の北部の温泉らしいアルカリのぬめぬめした泉質を楽しめます。

 

途中かなり狭い山道ですが,せっかくなので温泉と同時に地球のことも感じてみましょう。

 

土砂崩れの影響で通行止めになっていましたが,現在は普通車なら通行は可能です。

 

まずこのあたりの地質図をみてみましょう。

青いマークが口坂本温泉です。

 

このあたりは,青線の中央構造線の外側(外帯)は,黄緑の三波川変性帯の外は,北西から南東に異なる地層のラインができていますね。

これらは全て付加体の地層です。

つまり,海のプレートが潜り込む際に,海底の地層などがはぎとられ日本列島に次々にくっついていき大陸の一部となっていったものです。

 

左から右にいくにつれ,新しい付加体になります。

中央構造線のすぐ東側の付加体は2億年前というジュラ紀時代にくっついた付加体ですし,今回の口坂本温泉あたりは3000万年前あたりにくっついた付加体(四万十帯といいます)。

 

これらはいずれも日本がまだアジア大陸の東端にくっついていた時代の話です。

数千万年,1億年という長い長い年月をかけて,アジア大陸の内側から外側に,次々に海のプレートがはぎとった付加体がくっついていったんですね。

 

静岡の北のほうを奥に向かって旅するということは,新しい付加体から旧い旧い付加体にタイムスリップするのと同じことなのです。

踏みしめる大地がどんどん古くなっていきます。

しかもその大地は,もとからそこにあった大地ではなく,遠いかなたの海から運ばれてきた地面なのです。

 

 

おそるべし静岡の北部。

山肌の藤が美しいです。

 

口坂本温泉の地層は四万十帯(細かくいえば瀬戸川層群)なので,以前ご紹介した大谷崩れなどと同じで,多いのは砂岩や頁岩です。

昔は海底に堆積していたものがプレートの潜り込みに伴いここまでやってきたものです。

 

これが口坂本温泉に落ちていた頁岩。

いや,ここまで変性していると千枚岩や粘板岩(スレート)でしょうか。

 

   

しかし,このあたりには,蛇紋岩という少し珍しい岩石がたくさんみられます。

蛇紋岩は,地球内部のマントルを作る橄欖石(かんらんせき)が水と反応してできる岩石です。

ここでの蛇紋岩は,プレート境界付近で沈み込んだ海のプレートから供給された水が地下深くのマントルの橄欖岩と反応してできたものと考えられます。(ロマンですね)

 

地下深くの沈み込み帯で上記のように作られた橄欖岩が,その後上昇して地表に顔をだしているわけです。

この静岡の山奥で蛇紋岩にみられるということは,地球のダイナミズムを大いに感じさせてくれるものなのです。

このあたりはまだまだ未知の領域でもあり今後の研究が期待されます。

 

さて,温泉に入ったあとは,静岡市街への帰路の途中に仙俣川にも寄ってみましょう。

 

今回立ち寄ったのは,赤丸のあたりです。

 

河原におりてみました。

 

いきなり大きな土砂崩れの跡がお出迎え・・・

 

途中,きれいなチャートも落ちていました。

遠い海の底からここまでやってきたんですね。

 

仙俣川では,美しい互層の地層の褶曲がみられました。

中央を境に右と左で趣が異なりますね。

 

 

砂岩と頁岩の互層でしょうか。

大井川中流域の神尾褶曲や,高知県の室戸岬でみられた地層と趣が似ています。

 

いずれも付加体の地層です。

海底に堆積する際にこうして傾いたのか,大陸に付加される際の圧力で傾斜したのか,その後に傾斜したのか。

 

  

いかがでしたか。

口坂本温泉を楽しむついでにぜひ立ち寄ってみてください。

 

平成30年4月

静岡市清水区 弁護士 永野 海

 

関連記事