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マグマと清流の競演 河津七滝(河津町)

静岡県賀茂郡河津町にある河津七滝(かわづななだる)は、2万5000万年前にこの地を流れた溶岩の痕跡を感じられる貴重な場所です。

7つの滝をめぐるには、ゆっくり歩いて往復2時間程度でしょうか。

全体は高低差ゆるやかな行程ですが、この最初の大滝だけは、10分ほどの上り下りがあります。

これが最初の滝、大滝。梅雨どきで水量がかなり多いです。

滝つぼ近くから湧き出す温泉に入浴(水着着用)をさせてくれる旅館があります。

この高さ30m、幅7mの大滝をよくみてみると・・・

滝の右側には、柱状節理がみえます。

これはつい最近、2万5000年前に、この地の「登り尾(のぼりお)南火山」から谷沿いに流れた溶岩流が、急冷されて固まる際に六角形の割れ目が生じたものです。

滝の左側は、このときの溶岩ではなく、伊豆半島が海底火山だった時代の地層です。

河津七滝では、この2万5000万年前との溶岩と河津川との競演をとことん楽しめます。

大滝付近の温泉の温度。

地下水が、100m深くなるごとに2.3℃ずつ上昇する地下の地熱と、過去の火山活動で残る岩石の熱源などで温められています。大滝の地下近くに現役のマグマがあるわけではありません。

次に2つめの出会滝へ。河床に溶岩流の痕跡が顕著に残っています。

愛鷹山の河床にとてもよく似ているな、と思いました。

川の奥には丸いポットホール(甌穴)がみえますね。

同じ場所を石ころが水流の中で転がり続けて丸く削られたものです。

ここからは出会滝付近の溶岩が冷えるときにできた六角柱の柱状節理と滝との競演をご覧ください。

個人的には、この出会滝がもっとも印象的でした。

溶岩流の化石たちが、固まる寸前の最後の声をあげたまま凝固しているように思います(個人の感想です)。

3つめのかに滝。

少しわかりにくい場所にあるので降り口を見落とさないでください。かに橋までいくと行き過ぎです。

続いて4つめ、初景滝。

滝の右側の柱状節理とこのバランスのよい滝のコントラストが美しいですね。

2万5000年前に谷筋で固まった溶岩を、その後、長い長い時間をかけて、川の流れが侵食していきます。

それにより、柱状節理の内部の姿があらわになります。

5つめは蛇滝。

ここは滝の前のアコーディオンのようにねじれる柱状節理が一見の価値ありです。

溶岩は、一般的には、流れる際、上は空気に触れ冷やされ、下は地表に触れ冷やされ、上と下から冷えて固まる際の収縮によって、溶岩内部に向かって割れ目を作ります。

その後溶岩内部も冷えて行く際には、様々な方向から冷えて割れ目が作られていきます。

ここでみえている柱状節理は、溶岩全体のどのあたりの位置なんでしょうね。想像すると楽しいです。

ちなみにこの写真の右端は柱状節理が途切れていますが、ここは、古い海底火山時代の地層です。その地層の上に、噴火によって溶岩が流れだしてきました。

上流側から。

写真右側が古い海底火山時代の地層です。

そしてこの3枚が蛇滝の本体です。

ここは、柱状節理の断面を上からみながら滝の流れを観察するのがお勧めです。

柱状節理のこうした断面をみていると、いつもスーパーマーケットのテープでまとめられた円柱状のアスパラガスやえのきだけを包丁ですぱっと切ったときの断面を思い出します。

6つめ、えび滝。

遊歩道が通行止めで横からしか見えませんでした。残念。

ジオ鑑賞は安全第一。通行止めのロープにはしっかり従いましょう。

最後7つめの釜滝の前にある、柱状節理の断崖。

崖の中ほどの柱状節理より、下のほうの柱状節理の方が細いですね。

柱状節理は、一般的に、急激に冷やされると細くなり、ゆっくり、じっくり冷やされると太くなると説明されます。

この下部の細い部分は、当時、川と接触して急激に冷やされたのでしょうか。

そして最後7つめ、落差22mの釜滝。

この日はものすごい水量で、一瞬で、滝からの大量のしぶきでカメラがびしょぬれになるほどでした。

納涼滝しぶき。

滝の上部は登り尾南火山の溶岩による柱状節理、下部は、日本列島に衝突する前にできた古い海底火山時代の地層です。

さて、いかがでしたか。

わずか2万5000年前のこの地での溶岩の流れに思いを馳せながら、いまでも当時の火山活動の熱源で温泉が噴出する伊豆半島(東部では現在も現役の火山活動があります)のすばらしさを感じられると思います。

人間は常にダイナミックな地球の営みのなかで存在しています。

令和2年7月

弁護士・防災士 永野 海

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