富士山痕跡の穴場 陣馬の滝(富士宮市)
陣馬の滝、富士宮市の観光名所です。
陣馬の滝とよばれる所以は、鎌倉時代に源頼朝が富士で巻狩りをした際、この付近に陣を張ったことによるようです。
しかし、この陣馬の滝は、富士山のかつての大規模な活動の痕跡を知る貴重なジオサイトでもあります。
これが陣馬の滝全景です。
露頭の一番下の赤紫色にみているところは、巨礫を含んだ泥流層です。
以前、相模川西岸に残る1~2万年前の古富士山時代の大規模な泥流の地層をご紹介しましたが、それと非常によく似ています。
泥流というか低温の火砕流の堆積物というか、とにかく火山灰や玄武岩質の角礫を伴いながら、この場所まで流れ下ってきたことがわかります。
よくみると、泥流層の上には、その後に富士山から流れてきた溶岩流が固まった地層もいくつかのっています。
この泥流層は、田貫湖付近を覆う、かつての富士山の山体崩壊による岩屑なだれの堆積物と同じものではないかと思われます。
陣馬の滝と田貫湖(人造湖)はアクセスも近いですから、同時にみられるのがよいと思います。
滝の向かって右側も興味深いです。
滝の向かって右側も興味深いです。
溶岩の地層の下の比較的柔らかい地層部分が河川の侵食によりえぐられているようにみえます。
富士山の美味しい湧水を汲むことができる人気スポットでもあります。
陣馬の滝は、かつての富士山の大規模な火山活動や山体崩壊の現象を知る貴重な痕跡地です。
2万年ほど前に流れてきた大規模な泥流(岩屑なだれ)、その後の1万年前前後に複数回流れてきた溶岩流の地層(猪之頭溶岩)の流れを非常に明瞭に観察することができます。
アクセスも容易ですので、ぜひ訪れてみてください。
付近には、かつてこの陣馬の滝の滝壺にあったといわれる溶岩樹型も観察できます。
この地域では「太鼓石」と呼ばれていますが、樹木を溶岩流が覆ったあと、樹木部分は炭化して焼失したために、当時溶岩が飲み込んだ樹木の部分だけが空洞になったものです。
令和2年2月
弁護士 永野 海