井戸沢(塩ノ平)断層(いわき市田人町)
東日本大震災からちょうど1か月後の2011年4月11日の地震をご記憶でしょうか。
福島県浜通り地震、マグニチュードは7.0、最大震度は6弱でした。
この地震のメカニズムについては諸説あるようですが、個人的には、次のように理解しています。
東日本大震災により日本列島の下にある大陸のプレートである北米プレートが跳ね上がり、あるいは、それまで押され続けていた状態から解放され、東側に5.1mも陸地が広がりました。
日本列島がのる北米プレートが東に伸びてしまったために、いままで東西から圧縮を受け続けていた日本列島は、今度は逆に弛緩する状態になり、日本列島では地盤が東西方向にずれ落ちる正断層型の地震がおきやすい状態が作られました。
そうした状態のなかで、起きた正断層型の地震、つまり地盤がずれ落ちる地震としておきたのがこの福島県浜通り地震である、と。
これがそのずれ落ちた部分です。
井戸沢断層、あるいは地名をとって塩ノ平断層は、長さ14kmにもわたって、最大2.1mほど正断層型の地震によってずれ落ちました。
竹林のなかをどこまでもずれ落ちてできた断層崖(だんそうがい)が続いています。
この断層周辺の地権者さんであり、かつ、地震の語り部活動もされているお母さんにいろいろとお話をお聞きしました。
この4月11日の地震の日は、雷鳴も激しくとどろく日であったようで、そのようななかで、屋内にいたところ、ズドンとした大きな直下型地震に遭遇されました。
ありがたいことに、断層の露頭を観察しやすいようにきれいに道を整備していただいており、また、駐車場まで開放してくださっています。
こうした地元の方の協力なしには、ジオサイトは成り立ちません。
日本において、こうした海溝型地震後の正断層型の地震の痕跡というのは極めて珍しいものなので、全国各地から研究者が訪れたそうです。
井戸沢断層は、北北西から南南東に伸びています。
さきほどの竹林から今度は北側に移動します。
このあたりも非常に明瞭に地盤がずり落ちています。
写真手前側が数十センチから1め以上、落ち込んだわけです。
写真の畔を奥に進んでいくと、写真の左右に井戸沢断層が続いています。
井戸沢断層(塩ノ平断層)は、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)という海溝型の地震、すなわち、陸のプレートと海のプレートがまじわる海溝(日本海溝)部において、長年、海側のプレート(太平洋プレート)に押され続けた陸側のプレート(北米プレート)が、耐えきれなくなり、ついに断層の破壊を受け、その結果、長年のひずみを解消するように海側にだらーっとのびたあと、東西に弛緩した大陸側の地盤がずれ落ちていく、という一連の地球規模のメカニズムのなかで起きた地震です(私見。諸説あり)。
そのため、そうした構造を頭にいれながら、この14kmにもわたりずれ落ちた地震断層を観察することで、大きな時間軸での、地球上での物理学的なメカニズムを五感で感じられると思います。
ぜひ、この貴重な現場、しかも整備されているために容易に訪れ、観察することができる現場で、地球の仕組みを学ぶ時間にしてください。
令和2年12月
弁護士・防災士 永野 海