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浜松市の中央構造線 ぶらり防災の旅

JR飯田線の浦川駅です。

地図でいうとこのあたり。

浜松市天竜区佐久間町浦川。

ここも静岡県です。

中央構造線というと中部地方だと長野県の大鹿村が有名ですが,静岡県内でもしっかりと日本最大の大断層である中央構造線を学ぶことができます。

中央構造線については,ぶらり防災の旅の「大鹿村編」をご覧ください。

日本がまだアジア大陸の一部だったときにできた大断層です。

いまの日本列島でいえば,九州から関東までを貫いています。

(浦川駅前に掲示された中央構造線に関する地学マップ)

中央構造線の内側(北側)を内帯,外側(南側)を外帯といいます。

(浦川駅前のきれいなチューリップ)

内帯は花崗岩などを中心とする領家変成帯の岩石,外帯は緑色片岩や黒色片岩などの三波川変成帯の岩石からなります。

ちなみに私が個人的に好きなのは三波川変成帯。

これは,一般的には低温高圧の環境下でもとの岩石が変成作用を受けて結晶片岩になった岩石群です。

ここでの低温高圧の環境というのは,海洋プレートが大陸のプレートに潜り込む場所のことです。

潜り込む際にプレートと一緒に運ばれた玄武岩などの火山岩や凝灰岩などが,地下6km~20kmぐらいの深さの場所で,300~400度ぐらいの地熱で岩石が変成していくのです。

この変成岩ができたのはいまから6000~7000万年前。まだ日本がアジア大陸の一部だった時代です。

(これは何の写真でしょう?答えは後ほど)

三波川変成帯を代表する岩石は,緑色片岩や黒色片岩。

前者はもともと玄武岩などの火山岩や凝灰岩が変成したもの。

後者は,もともと泥岩(黒っぽいですよね)が変成したもの。

(浦川駅前の錦橋-中央構造線歩きの中心地です)

片岩というのは,熱と圧力で,片理という面状の構造が発達しその面に沿ってハンマーを叩くとすぐに割れていくような構造です(頁岩やスレートなどに近いですね)。

変成作用を受けるとだんだんと岩石の中にある造岩鉱物が大きくなっていくようです。

これで縞模様のような姿になるのですね。

(浦川駅の周辺を流れる大千瀬川(おおちせがわ))

変成岩なので鉱物の結晶が岩石のなかにたくさん生じていて,きらきらとしています。

三波川変成帯の岩石に惹かれる1つの理由は,これがプレートテクトニクスとつながっていると感じられるからです。

(浦川駅前を走るのは県道1号線)

他方,内帯を作る領家変成岩は,三波川変成岩よりもかなり古い1億年前に作られた片麻岩です。

この岩石は,せいぜい地下10km程度の火山の近くでマグマだまりなどの500~700℃程度の高熱にさらされて変成した岩石です。

みかけは赤っぽかったり白っぽかったりします。

さて,写真のこの場所は,中央構造線がとおる場所です。

山の中央部が凹んでいますね。

これが中央構造線の断層鞍部です。

このAの場所が断層鞍部です。

ここを中央構造線がとおっているために,何度も何度も断層が動くことで岩石が破砕され,もろくなっているため侵食を受けやすく山が削られ,谷筋になっているのです。

こんな感じで中央構造線が通っています。

飯田線は中央構造線と一心同体のような電車ですね。

中央構造線は静岡県をとおる場所では活動性は認められないとされているようですが。

断層鞍部をもう一度。

ちょうど飯田線が通ってほしかったですね。

破砕帯なので極めて地盤が脆いわけです。

このあたりの山はコンクリートで覆われた部分が目立ちます。

道路の脇に,珍しくコンクリートで覆われていない山の斜面が露頭していました。

黒色片岩(三波川変成帯)ですね。

このあたりの破砕帯は非常に広く(中央構造線のすごさを痛感するところです),狭くても数十メートル,広いところでは破砕帯の幅が数百メートルにも達するようです。

(中央構造線の破砕帯を観察できる場所)

そのため,大鹿村の中央構造線の露頭のように,内帯と外帯の境目をみられるような露頭は(知る限り)ありません。

黒色片岩など三波川変成岩の断層ガウジ(断層粘土ともいわれることがあります)。

断層が何度も運動することにより細かく破砕されて粘土状になります。

(中央構造線の断層ガウジ)

岩石は地表に近いところでは断層運動により破砕されますが,地下深くなればなるほど高熱に支配されるため岩石自体が破砕されるということはありません。

地下深くでは地震が起こらないとたぶん同じ理屈です。

地下10kmぐらいになると,もはや断層ガウジなどは生じず,断層が動く際に,岩石が割れずにうにゅっと変成されたマイロナイトという状態(岩石)に変身します。

この理解はとても大事だと思います。

これは断層ガウジ。

以前は,この大千瀬川の錦橋の上流左岸がマイロナイトの観察場になっていたのですが,現在は新しい道路工事のため立ち入ることができなくなっています。

写真の対岸がその左岸です。

露頭しているのが,鹿塩マイロナイトと呼ばれるマイロナイトです。

領家花崗岩がさきほどの理屈でマイロナイトになっています。

その後地下深くから隆起して地上に露出しているのです。

白い斑点上の組織と縞模様が特徴です。

しかし,川の右岸に沿った道路上(錦橋より上流)でもいたるところで露頭はみることができます。

領家変成帯の露頭。

非常に脆いです。

再度,対岸(左岸)の領家花崗岩のマイロナイト。

再度右岸の岩石露頭。

これも右岸。

花崗岩が変成しています。

これももとは花崗岩ですよね。

地学ハイキングをするには最高に美しい場所です。

JR飯田線の周辺にジオサイトは集まっていますので車でなくても可能です。

中央構造線の断層鞍部,断層ガウジ,三波川変成岩,領家変成岩,マイロナイトさまざまな観察ができる貴重な場所です。

これは断層の露頭ですかね(右岸)。

地震災害について考えるには格好の場所です。

ぜひ子どもと一緒にハイキングをし,防災につなげてください。

小田敷の集落にはうつくしい枝垂れ桜が咲き誇っていました。

中央構造線ハイキングの前後に,美味しいランチを食べながら内帯と外帯の岩石の石ころ広いはいかがでしょうか。

お店は,相川沿いにある「あい川」(浜松市天竜区佐久間町浦川2405-1)。

美しい相川の流れをみながら食事ができます。

ランチはこのボリュームで1000円。

これにデザートもつき,コーヒーなど飲み物は自由におかわりできます。

とても新鮮な素材で作られた美味しい食事です。

このレストランから河原に下りると・・・

いきなり緑色片岩(三波川変成岩)の巨石がおでむかえ。

ここの河原は,内帯と外帯の岩石の宝庫です。

油断すると2~3時間はすぐに経ってしまいそうです。

結晶片岩がこれでもかというほど落ちています。

石ころは数千万年,数億年の時の流れを刻む生き証人です。

地球を知り,地球を愛し,自然と共生する防災について少し考えてみてください。

平成30年4月

静岡市清水区 弁護士 永野 海

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