(巡検の様子 塩坂先生の写真をお借りしました)

 

静岡県民にとって、南海トラフ地震と富士川断層の関係を正しく理解することは、正しい防災につなげる上で不可欠です。

 

(産業技術総合研究所資料より引用)

これが一般的なフィリピン海プレートと駿河湾の関係についての通説的な図です。

つまり、南海トラフは駿河湾で急カーブをして駿河トラフにそのままつながり駿河湾に入り込んでいるという理解です。

(注:トラフは6000mに満たないので海溝とまで呼ばれない海の溝です。海溝にせよトラフにせよ海洋プレートの潜り込みによって「溝」が生じます)

この考え方を前提にすると、駿河湾内の「駿河トラフ」にフィリピン海プレートが潜り込んでいることになるので、東日本大震災のときのように、駿河湾内で陸側のプレート(ユーラシアプレート)が定期的に跳ね上がり、海溝型地震(南海トラフ地震)が起きるという説明になります。

 

(weathernews資料から引用)

駿河トラフでのプレートの跳ね上がり(断層の破壊)というのは東海地震説で何度も耳にしてきた説明ですね。

 

そしてこの仮説(通説)は、伊豆半島衝突説とも密接に関連しています。

フィリピン海プレートの上に乗った伊豆半島が、フィリピン海プレートの北西方向への毎年4cmずつの移動にともなって日本列島に衝突したという考え方です。

この図でわかるように、駿河湾にある駿河トラフは海側の「フィリピン海プレート」と西南日本を乗せる陸側の「ユーラシアプレート」のプレート境界です。

それが北縁では小山町で「神縄断層」としてプレート境界が続き、相模湾に抜けている、つまりここだけフィリピン海プレートは突起のように突き出ているという考え方です。

ご存知のように、フィリピン海プレートの↑の相模湾側の潜り込み帯で起こる地震が関東大震災を引き起こす「関東地震」です。

 

参考までに以前ご紹介した神縄断層(写真子供の右側の縦の線が断層)。

ここがフィリピン海プレートの北縁、つまり本州と伊豆半島の境界という説明が小山町教育委員会によってもされています。

 

しかし、塩坂先生が数十年前から唱えられている仮説はこれとは全くことなります。

この図の読み取りは容易ではないのであとで塩坂先生から指摘が入るかもしれませんが(笑)、以下のような仮説だと思われます。

① 以前は南海トラフと図の伊豆東方線がつながっており、そこにフィリピン海プレートが潜り込んでいた

② その後、何らかの理由でこの南海トラフを切り裂く(横ずれ)断層(図では駿河湾断層)が生じた

③ 駿河湾断層はそのまま富士川断層に左横ずれ断層としてつながっている

*左横ずれ、というのは、断層を左右にみて向かって立ったときに断層の奥が左に、断層の手前が右にずれる方向の断層ということです

*私見 上記②の「原因」は、フィリピン海プレートが北西方向に押す応力によるものか、あるいは妄想の域としては西や北西に動いていたフィリピン海プレートがあるときから北東端は北東側に動くようになり(実際、相模トラフではそうした動きになっています)、2つの矛盾する動きのなかで耐えきれずに駿河湾付近でプレートが分断されたのか、あるいはほかの理由によるものか・・・

 

④ そのため駿河湾内にプレート境界や、プレートの潜り込み帯は存在しない

⑤ 伊豆東方線には現在はプレートの潜り込みはない。

*フィリピン海プレートは南海トラフに潜り込み、伊豆東方線付近ではどこにも潜り込んでおらず、東側では、相模トラフで首都圏側に潜り込んでいることになります。このあたりのフィリピン海プレートの動きは塩坂説でも通説でも共通して特異なものです

 

1983年11月6日の朝日新聞です。

若き日の塩坂先生の写真がありますが(笑)、30年以上前から存在する論争なんですね。

 

塩坂説と通説では、富士川断層(帯)に関する考え方もこの表のように大きく異なります。

もっとも大切なのは、塩坂説では、富士川断層は、南海トラフ地震(静岡県付近のプレート付近断層の破壊)とセットで毎回動く、ということです。

富士川断層は南海トラフ地震という海溝型地震に誘発されて動くもので、分類すれば、直下型地震です。

しかもその際の変位量(断層が動く大きさ)は、なんと1000年に33mという途方もない危険なものです。

100年に1回南海トラフ地震が起きると考えれば、地震1回につき3.3m

このとき、南海トラフ地震でも富士川の西岸(右岸)ではプレートの跳ね上がりによって1.5m隆起しますので、特に富士川付近では、縦にも横にも動く大きな地震に見舞われてしまうことになりそうです。

 

これは先程の図にもでてきた太平洋は銭洲(ゼニス)海嶺付近の海底地形図です。

塩坂先生が指をさしているのは、垂直の断層の断面。

やはり横ずれ断層をうかがわせる証拠はあれど、(通説が主張する)プレートの潜り込みを示唆する地形の変化はみられないとの説明でした(だったと思います・・・)。

 

またこの図をみればわかるように、駿河湾沖では、海底の山、山脈が南北の断層によっていくつも切断されています(断層に向かって奥が左に、手前が右にずれています)。

仮に駿河湾のなかに駿河トラフがあり、ここにフィリピン海プレートが潜り込んでいるとすれば、こうした玄武岩の分布(全く褶曲していない?)にはならないし、また海底山脈が横にずれて切断されるような形にはならないとのことです。

 

最後に塩坂先生によるわかりやすい全体図を。

では、次回、実際に、横ずれ断層としての富士川断層の存在を示す現場をじっさいにみてみましょう。

 

平成30年7月 弁護士 永野 海