阿波の土柱(徳島県阿波市)
徳島県阿波市にある、有名な阿波の土柱。
この100万年ぐらいのつい最近の時代に堆積した砂礫層の地層です。
砂礫層というのは、まだ砂岩や礫岩のような「岩」になりきれていない地層です。
砂や泥が水中などに堆積して岩石になるまでには、1000万年とか2000万年という時間が必要ですから、100万年では、それが陸上にある場合はもちろん、接着作用が働く水中(湖の底とか海の中に堆積)でも、全然岩石にはなりません。
この土柱の地層は、そういう触ればボロボロと崩れていくような岩石になりきれていない地層が、雨や風や温度差などで侵食され続け、作られたものです。
とにもかくにもギャラリー的にご覧いただきます。
実物は、かなりの迫力で、一見の価値があります。
この砂礫層は、100万年前という単位の時代に堆積したものですが、このように断崖を構成するまでには、隆起の歴史があります。
ここは徳島県、やはりこの土柱の地層の南部を走る中央構造線が、この地層ができたあとに何度も何度も動き、その度にこの周辺の地盤を隆起させ、このような標高に到達したものです。
地層をアップでみるとこんな感じです。
岩石になりきれていない砂礫層。
さわるとボロボロ崩れます。
しかしこの土柱の形状がどうしてできたのか、説はいくつもありますが、定説といえるまでのものはないようです。
一般的には、砂礫層の中でも、比較的固い部分が残り、弱い部分が侵食で削られ、こうした凹凸が生じたという説明ですが、そういう機序なのであれば、日本中にもっと土柱が存在してもよさそうです。
一説には、侵食作用に加えて、中央構造線至近の場所にあることから、地震による地割れや地すべりも原因となっているのではないか、とも考察されています。
まだ未解明のこの阿波の土柱ですが、自然が作り出した造形として極めて優美なものでありますから、ぜひ一度ご訪問してみてください。
令和2年1月
弁護士 永野 海