朝日新聞デジタルに、以下のような記事が掲載されていました。

大手コーヒーチェーン「コメダ珈琲(コーヒー)店」に外観や内装が酷似しているとしてコメダ側が和歌山市の喫茶店に対し、店舗外観などの使用差し止めを求めた仮処分の申し立てについて、東京地裁(嶋末和秀裁判長)は差し止めを命じる決定をした。27日、コメダホールディングス(名古屋市)が発表した。(以上、記事の冒頭部分引用)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161227-00000063-asahi-soci

差し止めの根拠となる法律は、不正競争防止法です。

一般にはあまり馴染みのない法律かもしれませんが、人(法人)が努力をして築き上げたブランド、信用、商品形態などのただ乗りを許さない法律です。

今回のコメダ珈琲の事案も、コメダ珈琲がこれまでに努力をして築き上げた珈琲店としてのブランドにただ乗りをすることは許しませんよ、という裁判所の判断になります。

このケースでは、店舗の外観や内装が問題とされたということですが、外観を真似るということは、それによって便乗業者は、独自に設計するコストをかけずに店舗設計ができるというただ乗りができるわけですが、結局それだけでなく、珈琲を飲みに来るお客さんに対して、「お、コメダ珈琲?」 という印象を持たせることで、店に入ってもらったり、手早く周知してもらったりというただ乗りもできるわけです。

こういうただ乗りを許せば、頑張って企業努力でブランドを築き上げるのがばかばかしくなって(割に合わない投資になって)、ひいては経済の健全な発展を阻害してしまうじゃないか、という考えが背景にあるものと思います。

私も、以前尊敬する大先輩の先生にお声がけいただき、東京地裁の知財部での不正競争防止法の事案に取り組んだことがあります。その際の判決(幸い勝訴でした)は一般に公開されていますので誰でもみることができるのですが、

 

その裁判でも、ある既存商品に外観が似ている某商品について、それが既存商品の「模倣」なのかどうかが主に争われました。

不正競争防止法では、仮に商品の形態が似ていたとしても、商品の機能を確保するために不可欠な形態については似ていても仕方がない、としています。

誰が作ろうとしてもそういう形状にならざるを得ないよね、という場合はあって、それが作れなくなると社会経済上不都合になるからです。

また、仮に形態が似ていても、ありふれた付加価値のないような形状は保護されません。これも当然のことです。

 

 

今日のブログで何を言おうと思ったかというと、このコメダ珈琲の事案では、真似をされたといって差し止めを求めたコメダ珈琲の主張が認められたわけですが、「似ている」からといって絶対に法の保護を受けられるかどうかはわからないということです。

 

私がかかわった裁判でも、1つ1つの形状やその意味合い、なぜそういう形状をしているのか、そういう形状は一般的なものなのか、などについて気が遠くなるような慎重な議論が戦わされ、結局、「似ているけれども不正な模倣とはいえません」という結論になりました。

 

さて、上記のような結論になった場合、「模倣だ!」「不正だ!」と声高に主張していた当事者は逆に窮地に陥ります。

 

裁判だけで粛々と自社の主張をしていればまだよいのですが、ホームページなどで、「当社は某社に模倣された!」、「現在訴訟中です!」などとアナウンスしたり、取引先に言いまわったりしてしまうと、あとで裁判で負けたときに、逆に、相手の会社から損害賠償の請求を受けることになってしまいます。

 

とくに不正競争防止法では、こうした風説の流布による信用棄損という「無形の損害」についても積極的に認める条項がありますので、尚更リスクが大きいです。

 

ということですので、

 

「お、うちの○○が他社に真似されているぞ!」

「許せない!」

 

となった場合にも、行動に移られるのはくれぐれも慎重に、知的財産問題に詳しい弁護士にしっかりと相談してからにしましょう。

 

静岡市清水区 中央法律事務所

弁護士 永野 海