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被災者に少しでも希望を持ってもらいたいことについて

弁護士になって10年目に入りました。

いつの間にか、自然な流れで、災害問題に取り組むようになりました。

災害問題というのは、シビアな観点でいえば、お金には全くつながらない分野です。

弁護士というのは、経営弁護士になると、いわゆる事業者にほかなりませんので、毎月、ある意味では、信じられないぐらいの固定経費がかかるようになります。

事務所の賃料、事務員さんに対するお給料、リース経費、各種会費、会合などなど。

それでも、1円の収入ならないことでも、この災害問題にずっと取り組んでいるのは、それが自分が弁護士という仕事を選んだ思いにストレートにつながっているからです。

お金にならないからこそ、逆に変なバイアスがかからず、仕事の意味、意義をストレートに感じることができる側面があります。

もともとは、自分を頼りにしてくれる人の力になりたい、という思い、それが法律家という分野での貢献であれば自分の性格や能力の「形」に照らして、自分に向いているのではないかと思ったことがすべてのスタートです。

これが、いま取り組んでいる「被災者支援」という問題では、しっくりきます。

さて、先日、以下のような毎日新聞の記事がありました。

鳥取地震の被災者に関する記事です。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6218683

そのなかで、こんな一文がありました。(一部抜粋)

地盤沈下により家が傾いているとして赤紙が貼られた倉吉市の会社員男性(41)
は、「ショック。移住を含め検討する。地震保険にも入っておらず、修繕費用の補助
が行政から出るのか気になる」と話した。

 

静岡で大災害が発生してしまったときに、上記のような被災者は、残念ながら確実に生まれます。おそらく数えきれないほどの人数になると思います。さらに深刻な悩みを抱える被災者も多数生まれてしまうでしょう。

私は、災害問題にかかわる法律家として、そうした被災にあってしまい、本当の絶望の淵にある人たちに、ほんの少しでも希望の光を感じてもらいたいと、心から思っています。

絶望して自ら命を絶ってしまったりしないように。

家族のごく普通の、平凡でも尊い幸せが奪われることがないように。

そうした「現実的な」アドバイスを1つでも、2つでもしたいと思うのです。

 

この新聞記事をみたときに、静岡県弁護士会の執行部の先生方や、災害対策委員に対して、以下のようなメールを送付しました。

弁護士のすべてが被災者に希望を与える制度に通じているわけではありません。そうした知識は、日常の弁護士業務の中ではでてこないからです。

静岡の弁護士のなかで一人でも多く、絶望の淵にいる被災者に希望の光を与えられる弁護士が増えることを心から願っています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
被災県民の支援にあたるべき弁護士の皆様は、
静岡でこの男性の相談を受けたとしてどのようなアドバイス
をされますでしょうか?
少し考えてみてもらえるとうれしいです。

このメールの下のほうで、少し考えられる助言内容を
列記してみたいと思います。


(考えられるアドバイスは)
①まずはすぐに罹災証明書の申請をしてください
*支援を受けるための大前提となるスタートです
②建物は勝手に解体せず、被害状況をたくさん写真に残しておいてください
*勝手に解体すると、全壊などの適切な判定を受けられない可能性が
あります
③罹災証明で全壊と判定されれば、
ア 基礎支援金100万円がもらえます(被災者生活再建支援法)
イ 再建なら200万円、補修するなら加算支援金100万円ももらえます(同上)
ウ 最大350万円の貸付を受けることができます(災害弔慰金法)
エ 義援金の分配を受けられます(全壊世帯にはたくさん分配されます)
④建物は公費で解体してもらえます(廃棄物処理法)
⑤仮設住宅に無償で入居できます(みなし仮設の借上住宅も)(災害救助法)
⑥仮設住宅に入居しないなら、応急修理の補助も受けられます(災害救助法)
⑦住宅ローン負担が残るなら「被災ローン減免制度」もあります(ガイドライン)

ほかにも社協の貸付、生活保護申請など生きていくための支援も無数に
あります。
だから、決して絶望しないでください。

 

静岡市清水区 中央法律事務所

弁護士 永野 海

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